将来を描き、新たな価値を創造するコマツ

コマツ執行役員
スマートコンストラクション推進本部長
兼コマツレンタル代表取締役会長
四家千佳史氏

 第2部では、「将来像を自ら作り出した、数少ない日本企業」としてコマツが紹介され、同社執行役員スマートコンストラクション推進本部長兼コマツレンタル代表取締役会長の四家千佳史氏が登壇し、ゲスト講演を行った。

 ダントツ商品、ダントツ・サービス、ダントツ・ソリューションの開発・導入を通じて、新たな価値創造を目指すコマツでは、2015年よりスマートコンストラクション(スマコン)事業を推進。建機メーカーでありながら、ハードではなくその周辺のソフトに価値を見出し、イノベーションを起こそうとしている。

 「日本の建設現場では、深刻な労働力不足が大きな課題となっています。2025年には現在の3分の1に相当する130万人が減少するといわれ、これを解決するには、1人当たりの労働生産性を上げていくしかありません」と四家氏。そこで開発されたのが、情報通信技術をフル活用した建設機械、ICT建機だった。建機を自動制御することによって施工効率の大幅アップを狙ったが、建設現場全体の生産性という意味では、期待通りの成果を上げることができなかった。なぜなら、「ICT建機による施工は、建設・生産プロセスの一部を担うにすぎず、その前後にボトルネックがあれば、ICT建機の生産性を上げても、全体の生産性向上には寄与しない」(四家氏)からだ。

 熟練工のスキルをパッケージ化し、施工全体のオペレーションを最適化するソリューションの開発に向けて、コマツは顧客までのラストワンマイルの構築を強化する。すべての建機に通信システム「KOMTRAX(コムトラックス)」を標準装備するとともに、レンタル事業部門の強化を図った。「お客さまの現場に立ち、建機の使われ方や現場の周囲にあるものを知ることで、課題解決につなげようという取り組みが、スマコン事業です」。

PwCコンサルティング
Strategy&
ディレクター
堤俊也氏

 スマコン事業では現時点において、建設・生産プロセスの全工程をつなぎ、CAD(コンピュータ支援設計)の設計データやドローン(小型無人機)による測量データ、サプライヤーが何をどこから、どれだけ運んだのかといったさまざまな情報を取得し、全体の“見える化”を図るところまで実現した。

 今後は、建設・生産プロセスにおける不確実性を極小化し、全体最適に向けた取り組みが進められる。

 建設業界の労働力不足という社会的課題の解決を目指すスマコンをめぐっては、国や政府によるサポートも広がっている。

 国土交通省はスマコンと同様のコンセプトを打ち出し、土木施工基準を大幅に変更。2016年9月に開催された第1回「未来投資会議」で安倍首相は、建設現場の生産性を2025年までに20%向上させ、公共工事の現場では3年以内に建設プロセス全体を三次元データでつなぐという意欲的な目標を示した。

 講演後、会場から「IoTを活用したビジネスモデルをどのように収益化していくのか」という質問があった。これに対して、四家氏は「日本の建設投資額は約50兆円で、その生産性を2~3割上げることができれば相当な価値になる。まずは新しい価値を創造することを優先したい」と回答。スマコン事業は現在、2700の建設現場に導入され、2016年度は約50億円、2017年度には100億円の売り上げを見込んでいる。