人は一般に、軽微な事象よりも重大な事象のほうが起こる可能性が低いと考えていることがわかった。しかし、そこに起こる可能性がより高い軽微な事象を並べられると、重大な事象が起きる可能性がさらに低く感じられるのだ。

 たとえば、賞品を獲得する可能性が10%、という時点で、すでに十分可能性は低い気がする。だが、他の賞品を獲得する可能性が60%と聞くと、その10%がさらに小さく感じられてしまう。その結果、高額な賞品を獲得する可能性がより低く感じられるため、懸賞全体の価値まで低く感じられてしまうのである。

 すなわち、懸賞の客観的な価値を高める賞品を追加することで、懸賞の感覚的な価値を下げてしまうことになる。同様に、薬の客観的な危険性を伝えるためにより軽い副作用をいくつも挙げると、逆にその危険性が低く感じられてしまう場合がある。なぜなら、重大な副作用が起きる可能性が、より低く感じられるからだ。その結果、ポジティブなリスクを取り、マイナスのリスクを避けることが難しくなるのである。

 これらの結果は、マーケターにとっても、政策立案者にとっても、幅広い影響を与えうる。たとえば、公共広告キャンペーンでは、危険な行動が招く悪い結果をもれなく列挙することが多い。そのリスクをより強く感じてもらいたいからだ。だが筆者らの研究によれば、よかれと思って取ったその方法は、逆効果になる可能性がある。重大な危険性を1つだけ伝えるほうが、危険な行動を抑止する効果が高いかもしれないのだ。

 同じくマーケターも、製品がもたらす大きなメリットに加えて小さなメリットをいくつも伝える代わりに、大きなメリットを1つだけ伝えるほうが、売上げを伸ばせるかもしれない。また、従業員向けの報奨プログラムでは、多額の報奨金と同時により少ない金額の報奨金をいくつか設定するよりも、多額の報奨金1つに絞ったほうが、従業員の意欲を引き出せる可能性がある。

 言い換えれば、リスク評価の手助けをする場合、余計なものは省いたほうがよいのである。


HBR.ORG原文:Having More Options Can Make Us Evaluate Risk Differently, February 09, 2017.

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ウズマ・カーン(Uzma Khan)
マイアミ大学准教授。マーケティング担当。消費者行動と意思決定について研究し、トップクラスの経営学ジャーナルに研究成果を発表。受賞経験多数。学術誌『ジャーナル・オブ・マーケティング・リサーチ』および『ジャーナル・オブ・コンシューマー・リサーチ』の編集委員。コンサルタントとして航空会社や教育およびハイテク分野の企業を顧客に持つ。

ダニエラ・クポー(Daniella Kupor)
ボストン大学助教授。マーケティング担当。意思決定と消費者の説得が研究分野。マーケティングおよび心理学の主要な学術誌に研究成果を発表している。