ここで得た知見から、リーダーやマネジャーをはじめ、目標を設定して達成すべきすべての人がしばしば直面するジレンマにも、対処する方法が浮かび上がる。

 常識的に考えれば、リーダーは目標を設定した後、その達成方法についてはチームの自主性に任せる。だが、先の調査結果から正反対のことが示唆される。すなわち、リーダーは目標設定に当たっては柔軟なアプローチをとるべきだが、ひとたび目標が決定されたら、その達成に至る手順に関しては厳格であるべきである。

 さて、どちらが最善策なのだろうか。その答えは、人の行動に関するケースの例に漏れず、状況次第ということになる。

 比較的シンプルな目標を追求している状況で、かつ目標を達成しようとする意欲がかなり強い場合にはどうか。前述の調査が示唆するところでは、目標達成への手順を固定するよりも柔軟なアプローチをとるほうが、概して最善の効果が得られる。しかしながら、かなり大きな変化が求められる場合、あるいはチームの意欲が低いとリーダーが感じる場合は、厳格な手順と仕組みを設定することが、より有効なアプローチになるはずだ。

 あるマネジャーが、新たなイニシアチブ――たとえばコールセンターで一連の新たな顧客サービス基準を導入すること――を受け入れるよう、同僚たちを説得する任務を負っているとしよう。必要な行動を体系化する前に、マネジャーが問うべきは、「ここで問題なのは、同僚たちに目標に同意してもらうことか、それとも手順通りに遂行させることか」である。目標への同意を得ることが難しいと思われる場合は、何をどうすべきか、その行動と手順が柔軟かつ実行可能である点を強調して、マネジャーはチームを安心させるべきだ。またイニシアチブをチームに発表する時にも、柔軟性を必ず強調すべきである。 

 だが、そこでの問題は目標達成までの道のりだという場合、異なるアプローチが求められる。このときは、マネジャーははるかに体系化されたアプローチを採用すべきである。すなわち、目標達成に向けて取るべき手順を明確に、厳格に、そして具体的に定めるのだ。イニシアチブの発表時には、この新たなプログラムが策定された趣旨を単刀直入かつ簡潔に強調することで、新たな、あるいは不要な決定の数を減らすべきである。

 このように、目標設定へのアプローチとして「厳格」対「柔軟」のどちらを採用すべきか検討することは、あなたの個人的な目標達成にも役に立ちうる。今年もまた、休暇でなまった頭を目覚めさせようと、年の初めに1年の目標を立てたことだろう。さて、あなたはそもそも、目標に挑戦する気持ちになかなかなれないタイプだろうか。もしそうなら、柔軟なアプローチを採用することが最善策だろう。だがもし、その目標を達成することに苦労するタイプなら、たとえば他の優先事項が多すぎて一つのことに集中できない状況であれば、具体的な行動と手順などを設定した、はるかに厳格なアプローチを採用するほうが、より有効であろう。

 いくつかの研究によれば、1月末までに新年の抱負や目標を諦める人の割合は、3人に2人にのぼるという。目標の設定と追求に適切なアプローチを採用すれば、なまった体をシェイプアップできるだろう。しかし、そこでアプローチを見誤れば、トレーニング用のトレッドミルはガレージの隅に追いやられたまま、ほこりをかぶってしまうだろう。

 次回、あなた自身のために、あるいは、あなたが率いるチームのために目標を設定する時には、目標への同意が必要なのか、それとも目標を達成するための手順が必要なのかを見極め、それに応じて成功への道筋をつけることをお勧めする。

HBR.ORG原文:When to Set Rigid Goals, and When to Be Flexible January 27, 2017.

■こちらの記事もおすすめします
意志力にまつわる30年の誤解を解く
上手に仕事を任せるマネジャーは4つの条件を満たしている
経済主義 vs. 人間主義 2つの「目標による管理」

 

スティーブ・マーティン(Steve Martin)
影響力に関するコンサルティングを行うインフルエンス・アット・ワークのディレクター。HBR誌2012年10月号に掲載された“98% of HBR Readers Love This Article”の著者。また、共著書のThe Small Big: Small Changes That Spark Big Influence は『タイム』誌の2014年秋ビッグ・ビジネス書(売れ筋ビジネス書)にランクインして注目を集めた。

ヘレン・マンキン(Helen Mankin)
インフルエンス・アット・ワークの組織心理学者。英国ロンドンを拠点にしている。