自前主義を捨て、オープンイノベーションを

――テクノロジーの活用については、経営トップ、CIO、データサイエンティストのそれぞれにおいて、人材不足も指摘されています。

 私が学生だった30年前と比べると大学教育も大きく変わりましたが、それでもサイエンスをベースにビジネスの意思決定を下していくような、そういった教育はありません。テクノロジーでビジネスをどう変えていくのか。エビデンスベースで定量的に分析して判断するような教育が社会人にも必要です。たとえば、データ専門部署にいる人材は、業務をこなしながらデータサイエンスのコースを履修してもらう。半年~1年も勉強する必要はなく、3カ月程度の期間で順番に人材を送り込む。そうすれば、会社全体としてリテラシーが上がるでしょう。教育機関も社会人教育に対するフレキシブルな対応が問われています。

――日本のものづくり企業が復権するには、何が必要ですか。

 いいものをつくれば競争優位を保つことができた工業経済時代は終わりました。サイエンス経済時代においては、ものをつくって売ればおしまいではなく、売った後にどう使うのか、それがもたらす便益、すなわち価値をデザインしていく必要があります。そのためには、一つは自前主義を捨て去ることでしょう。産学連携や顧客企業との協業を通じてオープンイノベーションを誘発していくのです。自社の技術流出を懸念する声も聞かれますが、時には思い切ったバーターも必要です。すべてをオープンにしなくても、オープン&クローズのメリハリをつけて、パートナーシップを組めばいいのです。

 サイエンス経済時代のビジネスモデル構築において、欧米企業に後れをとっている日本企業ですが、私は日本型オープンイノベーションに大いに期待しています。日本企業はプラットフォームビジネスで世界標準を取ることは、あまり得意ではありませんが、顧客先によって商品・サービスが異なるB2Bの分野では、顧客を理解する力、提案する力は非常に優れたものがあります。今後は、顧客企業とのコ・クリエーションを通じて新たな価値を創出し、部門間を越えた全社的戦略的取り組みに拡大していくことで、競争優位を獲得していってもらいたい。IoT、ビッグデータ、AIの時代は、日本企業にとっても大きな商機といえます。

(構成/堀田栄治 撮影/宇佐見利明)