事例1:解決策を提示し、助言を求める

 ミネアポリスを本拠とするセリディアンは、人材マネジメント用のソフトウェアを提供する企業だ。リサ・スターリングは、同社の製品戦略バイスプレジデントを1年間務めた頃、最高人材責任者に昇進した。当初、彼女は両方の職務を掛け持ちする予定だった。

 しかし数ヵ月後、リサは膨大な仕事量に圧倒されていた。そして上司であるセリディアンのCEO、デイビッド・オシップに相談しなければと思いつつも、不安を感じていた。「これまで、上司に『助けてほしい』と訴えたことは1度もなかったんです」と彼女は語る。「上司との関係は良好でしたが、私は不安がありました。彼が(私を昇進させた)自分の判断は間違いだったと思うのではないか、私は適任ではなかったと感じるのではないか、と」

 リサは話を切り出す際に、「自分が理解している、会社の優先事項」を述べた。自分がデイビッドに求められている注力事項を、きちんと理解しているか確認するためだ。次に、製品部門と人事部門の両方で自分が関わっているプロジェクトを網羅したリストを彼に提示した。「そのうえで、どこが順調で、どこで苦労しているのかを話したのです」

 最後に、リサは解決策をいくつか提示した。「私はチームに、こうアドバイスしています。『私に問題を持ち掛ける時は、もし自分が私と同じ立場なら、その問題をどう解決するかを考えておくように』と」

 今回のケースでリサが提案したのは、組織的取り組みの一部を棚上げにできること、そして、ある製品の発売を一時的に延期できるということだ。さらにもう1つ、彼女の職務の一部を引き継ぐ、製品戦略ディレクターを雇うという提案もした。

 デイビッドはどちらの案にも賛意を示した。また、リーダーシップに関する有益な指導と助言も授けてくれた。「彼はこう言いました。キャリアを積むにつれ、日常的な管理業務の重要性は減り、チームを育てることが主な仕事になるのだと。自分がいろいろなことに首を突っ込みすぎていたと気づきました。他人に任せる能力を伸ばし、チームのメンバーがみずから仕事を全うできるよう、自分が一歩下がる必要があったのです」

 リサは、率直に話してよかったと思っている。「目が開かれた思いです。助けを求めなかったら、経営者によるこんなコーチングを受ける機会はなかったでしょう」

事例2:正直に、率直に話す。それでも上司が理不尽ならば、転職も考える

 ジャニーン・トゥルイットは数年前、大規模な病院グループの人事部で働いていた。ニューヨークのロングアイランドを拠点とするその組織は、毎年従業員数を急増させており、人事部はそのスピードにまともに追いついていなかった。

「私は、10ヵ所の施設の初級職から上級管理職に至るまでを担当していました」とジャニーンは振り返る。「上司はさらに、病院拡張に向けた特別プロジェクトと人材計画も私に割り振っていたのです」

 医療業界で10年近く働いてきた彼女は、限界に達していた。しかし、上司に相談する前に、親しい同僚たちと自分の仕事量について話し合った。「同僚に話をしたのは、仕事量が多すぎることに同意してもらうためというよりも、精神的な支えを得るためでした。どの人も仕事量が私よりだいぶ少なく、同情してくれました」

 彼女は上司に、この問題について話し合う機会を持ちたいと訴え、面談では率直な言葉で伝えた。「いまの仕事量をこなし続けるのは難しい、と上司に告げました。声を挙げることで自分がどんな結果になるかは、気にしませんでした。ただし同僚、ひいては患者さんを失望させてしまうことが心配でした」

 ジャニーンは、状況を改善するための方法をいくつか提案した。たとえば、初級職の採用は若手の人事スタッフに任せ、自分はもっと戦略的なポジションの採用に専念するなどだ。また、病院拡張プロジェクトの話し合いには、もっと早い段階から加わらせてほしいとも頼んだ。「そうすれば、何が必要となるかが早めにわかり、将来的により適切な人材配置ができますから」

 残念ながら、彼女のアイデアは上司にことごとく拒絶された。失望したジャニーンは、同僚に再び相談した。「私たちが取り組んだのは、同じ施設で似たようなポジションの採用が必要な場合に協力し合うことでした。そうすることで、負担をいくらか軽減できました」

 それでもジャニーンの仕事量は、辞表を提出するその日まで「限界を超え続けていた」という。現在の彼女は、事業戦略とマネジメントのコンサルティング会社、タレント・シンク・イノベーションズの最高イノベーション責任者を務めている。

 前職は彼女にとって素晴らしい思い出ではないが、貴重な教訓を得たという。「人材計画は、効率よく事業を進めるうえで最重要事項の1つです。顧客と従業員の定着率を高く、離反率を低く保ちたいならば、合理的な範囲を超えた過重労働が頻繁に起きないよう、万全を期す必要があるのです」


HBR.ORG原文:How to Tell Your Boss You Have Too Much Work  January 13, 2017

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レベッカ・ナイト(Rebecca Knight)
ボストンを拠点とするジャーナリストで、ウェズリアン大学講師。ニューヨーク・タイムズ紙やUSAトゥデイ紙、フィナンシャル・タイムズ紙にも記事を寄稿している。