アップルでは「イノベーションをもたらし、未来をデザインすること」やスティーブ・ジョブズがアップル創業時に掲げた「イノベーション、デザイン、シンプルを追求し、世界を変える」という価値観やミッションが会社の基盤として存在し、行動の指針となっていた。それとともに、ブランドは会社の印象の総合値であると捉えて、ブランドの構築と強化にこだわっていた。ブランドを傷つけるアイデアに、スティーブ・ジョブズは断固として反対していたし、それを間近で見ていたスティーブ・ウィルハイトは、魅力的な企画に迷わずノーと言えたのだろう。

シンプルさは行動の指針になる

 会社が不調の時には、つい目先の利益が大きい話は魅力的に映ってしまうだろう。会社が好調になり、強力なブランドを持つようになれば、他社から「一緒に何かやらないか」といった魅力的なアプローチも増えるはずだ。しかし企業の価値観やミッションがシンプルであれば、それは企業に浸透し、様々な場面で取るべき行動の指針として機能する。

 シンプル化するのは一見簡単そうに思えるが、絡まり合った糸を解くのが難しいように、その道のりは困難である。しかし、シンプルさはモチベーションを高めたり、効率的な仕組みを生み出したり、ブランドの強化につながったりと、苦労する分得られる効果は大きい。そして、本書ではアップル以外の事例も多く、どのような規模の会社でも「シンプルさ」が企業に成長と活力をもたらすことを解いている。

 本書は「私たちの仕事は何か」「私たちの目的は何か」といった根源的な問いを考え、複雑化した私たちの周りをシンプルにするきっかけを与えてくれる。企業のシンプル化はもちろんだが、まずは自分が属するチームからシンプル化を進めるのも良いかもしれない。