1日4時間、新しいことを考えていれば会社は変わる
伊賀:作業が楽だというのはよくわかるんです。四六時中、なにかもっといい方法はないかと考えていると、ほんとに頭が疲れてしまう。だから時々「考えなくてもできる作業」に逃げたくなる。データ入力とか資料を整理するとか。
ずっと考えてて、「ちょっと頭を休めないと、もう次の思考には移れない」みたいに煮詰まってしまった時には、いわば休憩時間としてそういう作業をするのが気分転換になります。反対に言うと、考えなくてもできる作業というのはそれくらい楽だってことです。
そういう作業的な仕事の対価としては、正社員ホワイトカラーの給料は高すぎます。頭を使い、リーダーシップを発揮して成果を上げてもらわないと、会社ももたない。
高岡:考える時間を10割にはできないけど、せめて4割、5割にはできるのではないかと思います。
伊賀:私の場合は真剣に考えることに使えるのは最大で1日4時間くらい。それくらいでも意識的に考える時間を持てれば、組織の動き方は大きく変わります。
高岡:変わりますよね。
伊賀:ルーチンに追われて「忙しい忙しい」と行っている人の場合、1日1時間も考えてない場合も多いのではないかと。あと、会議に出ていても、その間ずっと頭をフル回転させている人は多くない。作業が多いから考える時間がないというのは言い訳で、ほんとは考えないから作業が減らない。
高岡:ITとかネットワーク技術とか、どんどん使えば作業時間は減らせますよね。テレワークや在宅勤務だって可能になるわけですし。
伊賀:通勤時間ほど生産性の低い時間はありません。在宅勤務が普及すれば、保育所問題や介護休暇の問題の解決にもつながります。通勤時間の長さは社会全体の問題として、もっときちんと取り組むべきだと思います。
もう一つ、早くやめたほうがいいと思うのが、現金決済システム。現金で払うほうはATMに並ばないと行けないし、受け取るほうは両替してお釣りを揃えたり、営業後には毎日お札を数えて収支を合わせないといけない。無駄な作業が発生しすぎです。もっと言うと、コンビニ強盗にしてもオレオレ詐欺にしても、現金がなかったら存在しない犯罪なんです。少なくともお金のために、ナイフを突きつけられる人はいなくなる。
高岡:確かに。
伊賀:あとは、選挙制度。いまだに紙に鉛筆で文字を書いて、大勢が真夜中まで投票用紙を数えている。なぜデジタルで投票できるようにしないのか。
働き方改革も大事ですけど、通勤、現金払い、投票方法など、明らかに国民の生産性を下げているシステムを10個くらい挙げて、それをどうなくすか真剣に議論したほうがいい。人手不足の解消という意味でも、そのほうがよほど役立つはずです。
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【著作紹介】
生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの
(伊賀泰代:著)
「成長するとは、生産性が上がること」元マッキンゼーの人材育成マネジャーが明かす生産性の上げ方。『採用基準』から4年。いま「働き方改革」で最も重視すべきものを問う。
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