事例1:完璧主義者に助けの手を差し伸べ、時間短縮の手段を探す

 割引やクーポンを提供するウェブサイト、PromotionCode.org(プロモーションコード)の共同創業者であるマイク・カターニアの下には、最高かつ最悪の従業員がいた。彼女の担当は、サイトの顧客に提供される割引コードを確認しデータ入力する仕事だ。

 その正確さは社内トップで、従業員の入力正確率は平均で80%なのに対し、常に100%に近い成績を誇っていた。だが、彼女はかなり完璧主義者のため、処理数は期待目標の約半分しかない。日付や記述は3回チェックし、割引提供店に確認の電話をした(もっと仕事の速い同僚たちは、電話などめったにしない)。

「当社の“カメ”は、怠け者なわけでも、期待目標を理解していないわけでもありませんでした」と、カターニアは言う。「チームで最も技量があったのは、間違いなく彼女でした。だからこそ、スピードアップしてもらうことが非常に重要だったのです」

 カターニアは彼女の迅速化を期して何度か話し合いをしたが、説得するのは常に困難であった。彼女の仕事の精度に文句のつけようはなかったからだ。「ある程度までは放任していました。彼女は非常に優秀だったので、その仕事ぶりを台無しにしてはならない、過剰管理するべきでないと思ったのです。だから大目に見ていました」

 契機が訪れたのは、同社が多くのデータ入力作業を自動的に検証できる社内システムに投資した時である。その従業員は、2、3ヵ月経つと、新たなシステムを十分に信頼するようになり、いままで絶対であった自分のルーティンは必要ないと納得するに至った。「いまだに、彼女はデータ入力が遅い1人です」と、カターニアは言う。「ですが、入力をサポートするこのシステムのおかげで、彼女の作業スピードは約30%向上しました。十分に許容可能な範囲です」

 肝心なのは、「ある従業員が最高の人材だとわかった時点で、ただちにその人をサポートするシステムをつくること」だと彼は言う。

事例2:明確な期待目標を設定し、定期的に状況確認をする

 フロリダにある移民関連の法律事務所でケースマネジャーを務めるラリッサ・ノニは、病気のため少しの間仕事を休んだ。復帰すると、新しいアシスタントに対する不平が広まっていた。職場のペースに遅れすぎているという。「翻訳は遅れているし、クライアントには折り返しの電話をしていない。移民申請書の作成は永遠に終わらないようでした」。この状況への対処は、チームリーダーであるラリッサの肩にかかっていた。

 ラリッサは、アシスタントの遅い仕事ぶりを非難するよりも、新たな方針を採り入れた。仕事を整理するためという名目で、月曜日の朝に1対1の簡単なミーティングを持ち、その週の仕事量と作業を洗い出すことにしたのだ。「私は彼女と一緒に仕事のリストを眺め、クライアントごとに保留になっている案件を確認し、それぞれに期日を設けました」

 これを始めてから最初の週が終わる頃には、アシスタントの仕事ぶりはすでに目覚ましく向上していた。勤務歴が長い従業員たちに比べ、まだ案件の詳細には通じていないが、仕事は速くなり期日を守るようになった。ラリッサは彼女の仕事ぶりをきちんと称賛し、チームの重要なメンバーだと伝えた。

「彼女はそもそも遅れを認識すらしていなかったのだろう、と私は気づきました」とラリッサは言う。明確な期待目標が示されなければ、自分が遅いことを知る由もないのだから。


HBR.ORG原文:How to Get an Employee to Work Faster  January 03, 2017

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キャロリン・オハラ(Carolyn O'hara)
ニューヨーク市を拠点とするライター兼編集者。『ザ・ウィーク』誌のマネージングエディター。PBSニュースアワー、および『フォーリン・ポリシー』誌での職務経験もある。