消費者主導のマーケティングに求められるもの

 こうした消費者主導の新たなマーケティングプロセスを導入する上で、求められることがいくつか想定される。

 まずは、社内において、ソーシャルで拡散させることを前提とした「価値観」を醸成し、それに基づいたブランドマネジメントを行うことである。マクドナルドは元々カジュアルなブランドイメージがあるので、消費者にツッコんでもらったり、笑ってもらったりすることは、歓迎すべきことであり、ソーシャルでの拡散とのブランドとしての距離が近い。

 しかし、たとえばラグジュアリーブランドであれば、LINEやTwitterのようなカジュアルなコミュニケーションツールがそぐわないと判断することも多いだろう。そうして、クールな自社サイトや、エグゼクティブ向けの雑誌広告などを展開する。こうした活動しかできないブランドは、次第に消費者との距離が開いてしまい、いつかは見放されてしまう日が来るかもしれない。こうならないためにも、まずは企業やブランドとして、「ソーシャルに取り組む」ということを前提とした価値観を持ち、それを基にブランドマネジメントを行わなくてはならない。

 こうした社内の価値観を醸成した上で、カギとなるのはそこで活躍する「人材」である。一人ひとりがソーシャルやPRについて必要な知見を持っていることは当然のこと、「何を伝えたら消費者間で話題にしてもらえるか」ということのアイデアをゼロベースで生み出す力が求められていく。まだ製品も何もないところから、「こんなことをしたら話題性がある、驚きがある」というメッセージを考え出すことは決して容易ではない。製品があれば、それをとっかかりにコミュニケーションを考えられるが、ゼロベースでメッセージを考えるということは、実は多くのマーケターが経験をしていない領域である。これについては、そうした人材を社内に多く抱えられるように人材育成を進めることも必要だが、広告代理店やデジタル系のメディアなど、外部のリソースを借りながら創発的にチームで生み出していくことの方が効果的なように思う。そういう意味で、これからのマーケターには、多様な人材を集めたチームのアイデアを引き出しながら物事を大きくしていく、ファシリテーション型のリーダーシップスタイルが求められるといえよう。

 最後に重要なことは、「意思決定」である。CMOを中心としたマーケティング組織に権限委譲し、消費者に近いところで意思決定をすることが極めて重要となる。データを基にした意思決定では、過去の経験を頼りにするので、将来のバズについては予見しきれないことが多い。つまり、「確証のあるデータはないが、それでもこれはいけると判断したらGOする」という意思決定を行える強いリーダーシップをCMOが発揮できなければ、この体制は機能しない。イノベーティブなアイデアを奨励し、積極的にリスクを取りにいく意思決定を行えるリーダーが、これからの消費者主導のマーケティングにおいては欠かせない存在となってゆくだろう。