消費者主導のマーケティングプロセスへ

 こうした背景を踏まえると、私は、これからのマーケティングは、価値主導、社会的意義主導という側面もあるが、それよりも、「消費者“主導”」への移行が加速すると考えている。

 マスメディアの影響力が低下し、世にあふれる情報の発信者は企業やメディアから、消費者一人ひとりへと移行している。ということは、消費者間のコミュニティにおける情報のやりとりが、圧倒的に影響力をもち重要なコミュニケーションルートになる。だとすると、企業がどんな商品を開発しどう伝えるかより、むしろ、消費者がどう伝えるかが製品の成否を決めるのである。

 であれば、製品を作るより先に、「どういうメッセージやニュースだったら、消費者間で広めてもらえるだろうか?」ということを考えるべきではないだろうか。つまり「何を広めていただきたいか」を先に決め、「それを広めていただくには、どういう製品でなくてはいけないのか」という順番でモノ作りを行うのである。この逆転のプロセスにこそ、消費者間のコミュニケーションによる認知や利用意向の獲得を前提とした、新しいマーケティングプロセスではないかと思う。

 ではこの消費者主導のマーケティングプロセスは、どういったものになるのだろうか。まずは製品開発のプロセスからみていきたい。通常は、「どういった製品にニーズがあるのか」という消費者ニーズを把握することから始めることが多いだろう。これを、消費者主導マーケティングでは、ニーズの把握から入るのではなく、「何と言われたら欲しくなるか」という具体的なメッセージのアイデアを抽出することからスタートすることになる。

 たとえば、前出のチキンタツタの事例でいうと、マクドナルドも以前は、「チキンタツタには和風おろしが合う、というニーズがあるから『チキンタツタ和風おろし』を販売する」ということを実際に行っていた。それを、「チキンタツタのライバルとして、チキンタルタが登場!」といった、具体的な製品アイデアとメッセージを最初に作り込み、それを消費者に評価してもらい検証し開発を進めるのだ。

 どういうメッセージが伝えられたら、消費者が他人に勧めたいほどに興味が湧くのか、ということを最初に検証し、それから製品開発に入る。このようなプロセスへと転換することにより、製品ありきではなく「欲しくなる、伝えたくなるアイデアから入る」というマーケティングプロセスとなり、消費者主導のマーケティングプロセスが実現する。

 次に、マーケティングコミュニケーションにおけるプロセスをみてみよう。従来型のマーケティングでは、予算を最も投下するTVCMを中心としたマスのペイドメディアの企画からスタートし、その補足的な役割として、自社HPといったオウンドメディアや、PRやSNSといったアーンドメディアを後付けで検討していた。

 しかし、消費者主導のマーケティングプロセスにおいては、コミュニケーションの企画もソーシャルからスタートすることになる。ソーシャルで「何をシェアしてもらうのか」ということを定義することからスタートし、拡散させるために、自社HPやSNS公式アカウントで何を発信し、PRを通じて何を消費者に訴えかけるのかを規定するのだ。このように、オウンドメディアで情報のベースを作り、アーンドメディアで拡散させるということがコミュニケーションの中心となる。TVCMやデジタルバナーといったペイドメディアは、ソーシャルでは届かない層へのリーチを補完するためのツールと位置づけられ、最後に検討されることとなる。このように、マーケティングコミュニケーションのプロセスも従来とは逆転することとなる。