「バズ」は偶然ではなく、計算して起こすもの

 メディアで掲載されるニュース価値のことを「PRバリュー」と呼ぶのに対し、ソーシャルで話題にしてもらえる情報としての価値を、ここでは「SNSバリュー」と呼びたい。前述の通り、消費者がその商品・サービスや情報に対して共感し、自分ゴト化してもらうことが欠かせない。自分ゴト化することにより、情報の受け手に過ぎなかった消費者が、情報の送り手となり企業の代わりに発信をしてくれるのだ。

 ソーシャル上で強力に拡散することを「バズ」と言うが、バズは結果論にすぎず期待すべきではないと言われる。しかし、ソーシャルの力を想定外として計画すると、数字の読めるデジタル広告の効率的な露出に傾注してしまう。しかし、ソーシャルのバズは、本来は設計して起こすべきものだし、起こしうるものだと考えている。社会現象ほどの圧倒的なバズにはならなくても、少なくともバズとしての目標値を定めてそれを達成することは可能だろう。

 そのためには、まずKPIを設定する必要がある。たとえば、ツイッター上でのリツイートや、コメント数といったものだ。こうしたKPIの設定にありがちな反論がある。それは、「その数字が上がれば本当に売上が上がるといえるのか?」「数字だけをタクティカルに追いかけてしまい質が加味されないのではないか?」といった声だ。

 これについては、売上や販売数といった最終的な目標(KGI)との相関を図り、相関の高い指標をKPIとして設定することが、当然ながら必要である。相関さえ証明できていれば、あとのことは実は運用の問題であり、運用しながら使いにくい点があれば、柔軟にKPIを見直していけばいい。

 あるべきKPIをいつまでも議論しているよりも、早く決めてしまって、動かしながらまた変えていく方が、よほど現実的だし、やりながら変更するプロセスを経ることで、組織として学習することができ、組織全体のKPIに対する本質的な意味合いの理解を高めることにもつながる。

 その上で押さえておきたいことは、ソーシャルはあくまで短期勝負が基本だということだ。だらだらとずっと盛り上がるということはあまりなくて、一度盛り上がったらその瞬間は消費者がそこに集中し、2、3日で飽きて終わっていく。そうした情報が過ぎ去っていく世界だと捉えている。

 そのため、マクドナルドでも販売前のバズを重視している。マクドナルドではPRリリースを販売の1週間ほど前に配信しており、販売までの1週間でバズを最大化することを目指している。ソーシャルにおいてはニュースの鮮度が重要で、1週間も経ったニュースを投稿することは、「情報に遅れている人」とみなされてしまう。つまり、ニュース発信から2、3日の話題化が実は勝負なのである。そして、販売前のバズを最大化できれば、情報感度の高い層が発売初日に利用してくださり、そうした層がさらに「話題の商品、試しました!」とまた拡散してくれるので、その後の継続的な売上にも貢献するのだ。ソーシャルで拡散するかどうかは、結果的に起こるものであって予測できない、という声は多い。しかも、いわゆる炎上のように、意図せず発生するものも存在する。しかし、このように計算してソーシャルを動かすことは十分に可能であるし、そうやって消費者に「広めていただく」ことが、圧倒的にマーケティングの投資効率を高めるのである。

最終回につづく。