●沈黙を続けるという選択肢は、もはや通用しないかもしれない

 CEOは複数の利害関係集団から、議論を呼ぶ問題について声を挙げるよう迫られる。我々の調査では、世界各地の大手企業幹部の46%が、そうした争点(気候変動、銃規制、移民、LGBTの権利など)について企業は意見を表明すべきだと答えた。この数字は2014年調査時の36%から上昇している。

 なかでも、世界的な評判を持つ企業の幹部らの回答は、特にこの点が顕著で、争点に際し立場を公にする企業を好む割合は63%に上る。消費者の場合は同様の回答が41%に留まっているが、CEOに意見表明を迫る外部要因としては十分だ。

 したがって、入国規制の大統領令に100人を超える(ほとんどは大手ハイテク企業の)CEOが公に反対し、規制は人材多様性と企業理念を損ねるとする意見陳述書を共同提出したことは、驚くには当たらない。こうした表明は新政権の発足以前にもある。今回の反対に加わったCEOの一部は、2016年3月、LGBTの権利を害するノースカロライナ州の法案にも反対を表明した。

 もちろん、すべての企業があらゆる社会問題や政治運動に加わる必要があるわけではない。我々の調査では、世界の消費者の20%が、企業は争点について声を挙げるべきではないと回答した。34%は「場合による」で、争点とビジネスとの関連度で判断するとした。残り5%は「わからない」と答えている。

 企業幹部にとって、公式見解の表明に関する決めごとをしておくのは必須である。沈黙を保つことのリスクはいまだ数量化されていないが、態度を明確にするよう求める従業員、同業他社、顧客からの圧力は高まっていると思われる。たとえばオラクルでは数百人の従業員が、前述の陳述書に自社も参加するよう求める嘆願書に署名した。

 ●対応の準備をしておく

 CEOは自社の評判に関する潜在的な脅威を想定し、対応策を準備しておかねばならない。ウェーバー・シャンドウィックの調査によれば、企業が、危機の発生時にソーシャルメディアでの対応策を発動するまでの平均時間は38時間である。(英語報告書)。しかし1日半の間には、事態が大きく変わってしまう。

 予想外の政治的注目に備える1つの方法は、危機対応のシミュレーション訓練をすることだ(ウェーバー・シャンドウィックは「ファイヤーベル」というシミュレーション訓練を提供している)。以下は、当社がクライアント企業に提供しているシナリオの1つである。

 あなたの会社で、物品の一部を米国外の拠点からボストンに出荷する必要が生じた。急な需要に応じるためだ。数時間後、フェイクニュースのサイトが記事を発表した。その内容によれば、あなたの会社は税法を悪用するために生産を米国外に移転し、米労働者から仕事を奪っているという。

 間もなくそのフェイクニュースは、主流メディアとソーシャルメディアに流れる。そしてハッカーが、顧客データのオンライン流出をネタに金銭を要求。怒れる従業員が、自社への不満をソーシャルメディアでぶちまける。マスコミは会社の公式声明を出せと騒ぎ始め、競合他社や政府関係者は批判的なツイートをする――。

 企業のリーダーはこうしたシミュレーションによって、何を言うかだけでなく、誰に対してどう発信するかをも考えるよう迫られる。CEOと経営陣は、利害関係者が何を期待しているかを理解したうえで、評判の危機に際してできること、できないことを明確にした戦略を立てるべきなのだ。

 ●個人的なストーリーにする

 リーダーは、メッセージやストーリーを受け手に合わせる必要性を心得ているはずだ。社会問題への立場を表明する際にも、それは変わらない。CEOは、争点を従業員と顧客の日常に結びつけるストーリーを組み立てるべきである。

 入国規制を命じた大統領令に対し、一部のCEOはメッセージを非常に個人的なものにした。マーク・ザッカーバーグはフェイスブックの投稿で、自身の家族が持つ移民のルーツを記したうえで、「自分の家族とは別の部分においても、これらは私にとって個人的な問題」であり、「ここは移民の国」であると述べている。

 アップルCEOのティム・クックは、大統領令が自社の従業員と社会全体の両方に及ぼした影響を述べ、共同創業者スティーブ・ジョブズが移民の息子であることに言及した。「我々の会社は多様性を――考え方の多様性を頼みとしており、人々は多様な意見を持っているのが普通です。さまざまに異なる背景と視点を持つ人々から成るタペストリーによってこそ、最高の製品を生み出せるのです」。個人に訴えかけるストーリーは、従業員、顧客、ベンダー、就職希望者を含むさまざまな聴衆に共鳴する。

 ●数の力を意識する

 CEOは、同業他社や業界団体と緊密に連携し、共同戦線を築いて表明するとよい。それによって運動の勢いを誇示し、影響力を強めることになる。そして敵対側にとっては、大きなリーダー集団が共同声明を発すれば、その動機に疑問や批判を呈するのが難しくなる。

 たとえば2016年3月には、LGBTの権利を侵害すると広く見なされたノースカロライナ州の「トイレ法案」(公共施設内では出生証明書と同じ性別のトイレを使うよう求める法案)に対し、80人を超えるCEOとビジネスリーダーが撤回を求める嘆願書に署名した。

 11月には全米製造業者協会が、大統領宛ての書簡を公表。ここでは1100人以上の製造業リーダーが、大統領選を経て分断された国を1つにするために貢献すると誓い、製造業を最優先事項にするよう大統領に訴えた。最近では2017年2月1日、100を超える業界団体と小売企業がAmericans for Affordable Products(手頃な価格での商品提供を目指す米国企業)というキャンペーンに参加し、トランプ政権による国境税は消費者物価を上げるとして反対を表明している。

 ●企業理念に忠実に行動する

 CEOはどの立場を取るのであれ、それは自社の理念と一致していなくてはならない。その理念とは、多くの従業員に共感され会得されている価値観だ。入国規制の発令後に直接行動を起こした複数のCEOは、会社の理念体系に忠実であると見なされた。また、一部の企業は特定の慈善団体(米国自由人権協会や国際救済委員会、移民リソースセンターなど)に寄付することで、自社が従業員と理念を共有していることを示している。

 理念に忠実であることは、企業の評判において重要だ。求職者にとって、企業が何を支持するのかは、何をつくり売っているのかと同等の意味がある。我々の調査では、消費者の77%および経営幹部の95%という大多数の回答者が、もし現在求職中ならば企業の評判に判断を左右されると答えている。ミレニアル世代(2000年以降に成人となる人々)の消費者は特に、この傾向が顕著だ(85%)。つまり、自身と同じ価値観を持つ雇用先を求める可能性が高いことになる。

 今日の情勢では、CEOは気づけばいつの間に、争点への意見を表明するよう迫られていることもあるだろう。その決意をすれば、評判の向上につながり、信頼性と影響力も高まるかもしれない。本記事で示したガイドラインは、危機的な政治問題化に際し会社の評判を守る役に立つだろう。


HBR.org原文:What CEOs Should Know About Speaking Up on Political Issues February 17, 2017

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