エキスパート・リーダーシップに関する研究は、まだ新しいが進みつつあり、近年では次のような証拠が示されている。病院は、経営トップが非医師の場合よりも医師であるほうが、治療の質(病院のランキング)が高い傾向がある(英語論文)。米プロバスケチームは、監督が元オールスターチームの選手であるほうが成績がよい(英語論文)。F1のチームは、リーダーが過去にレーシングドライバーとして成功しているほうが、成績がよい(英語論文)。大学は、トップ(学長または副学長)が優れた研究者である場合、非アカデミア出身の有能な運営管理者であるよりも、組織としての研究業績が高い(英語論文)。

 我々の今回の研究では、米国と英国で無作為に選ばれた計3万5000人の従業員とその職場を対象とした。職務満足度を測るために用いた方法は、従来からあるものだ。米国でのアンケートでは、「現在の自分の職務について、どう感じていますか。1=とても嫌い、2=やや嫌い、3=わりと好き、4=とても好き」と尋ね、回答の平均は3.2であった。英国では、「自分の職務に完全に満足している」から「自分の職務にまったく満足していない」までを7段階で答えてもらい、平均は約5.3であった。

 これらの結果は全体として、素晴らしくはないが悪くもないように見える。従業員たちの幸福度はまずまずだ。

 しかしデータを詳細に見ると、驚くべき傾向が現れた。先述した3点に基づく有能な上司は、典型的な従業員の職務満足度に圧倒的にプラスの影響を及ぼしているのだ。測定された効果の大きさには、我々自身も驚かされた。たとえば米国では、職務満足度において、専門技能の高い上司を持つことは、給与よりもはるかに重要となっている(たとえかなりの高給であっても)。

 職場での幸福度が多くの要因に影響されることは、今回の研究でも示されている。たとえば職種、学歴、在職期間、所属業界なども影響が大きい。だが上司の専門技能に比べると、そのインパクトはまったく色あせる。加えて、従業員が同じ職にいて新しい上司が来た場合、その新任者が専門技能に長けていると、その後に従業員の職務満足度は上がっていた。

 結論はこうなる。従業員が最も喜びを感じるのは、「経験に裏打ちされた知識を持つ上司」の下で働くときであり、その喜びが仕事のパフォーマンスをも高めるのだ。

 実験室環境でのランダム化試験では、職場での幸福度が高い従業員は生産性も高いことを示す証拠が増えている。ある実験では、幸福度のわずかな向上が労働生産性を12%高めたという信頼できる結果が示された(英語論文)。また、職場で幸福な従業員は離職する傾向が低い(英語論文)。周知の通り、企業にとって高い離職率は手痛いコストになる。そして近年では、従業員の幸福度が高い企業は、長期的な株価成長率も高いことが証明されている(英語論文)。

 上司の影響力は非常に大きい。一従業員としてのあなたの職務満足度は、かなりの部分が上司の能力によって決まる。そして、あなたが管轄するチームの満足度は、あなたの能力に左右されるのだ。


HBR.ORG原文:If Your Boss Could Do Your Job, You’re More Likely to Be Happy at Work December 29, 2016

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ベンジャミン・アーツ(Benjamin Artz)
ウィスコンシン大学オシュコシュ校准教授。

アマンダ・グドール(Amanda Goodall)
キャス・ビジネススクール上級講師。経営学を担当。

アンドリュー J. オズワルド(Andrew J. Oswald)
ウォーリック大学教授。経済学と行動科学を担当。