1.よりよい結果を想像する1

 上向きの反事実、つまりもっとよい交渉結果になりえた道筋を想像してみよう。他者の行動ではなく、自分自身の行動のみについて考える。たとえば交渉相手は、契約を柔軟にする複数の提案に同意してくれそうな雰囲気だった。しかし、そこで両者は休憩を挟んだ。そして再開後、相手の態度は硬化していた。もし休憩前に回答を強く求めていれば、もっとよい結果が得られたかもしれない。

2.よりよい結果を想像する2

 もう1度さらに別の、上向きの反事実を想像してみよう。なぜなら、最初に考えた代替シナリオを唯一のものと思い込んで、固着してしまうのを防ぐためだ。これは「後知恵バイアス」という、人間が生来持つ傾向である。最初に考えた代替シナリオは、非常にわかりやすい。いったんそれを考えつくと、ある種の自信過剰が生じ、それを最初から知っていたような気になってしまうのだ。

 望ましい結果につながりえた別の道筋を考えることで、失敗を単純で手っ取り早い理由で片づけるのを防ぐことができる。第2のシナリオはたとえば、契約の柔軟性に関する話題を、交渉の最初から持ち出していたらどうだったのだろう。交渉の後半でいきなり切り出す(という実際にやった行動)よりも、もっと成果が得られたのではないだろうか。

3.同じ結果に至る別の道筋を想像する

 これは半事実的思考(semifactual thinking)、または「イーブン・イフ」(even if:たとえ~でも)と呼ばれる方法である。たとえば、交渉を2回に分けて、それぞれ異なる交渉相手にすると想像してみよう。そして、最初の交渉では価格だけを扱い、2度目は価格以外の話をする。事実とはまったく異なる経験だが、結局は同じ結果に終わる可能性がある。

 次に、なぜ同じ結果になりえたのか、自問してみよう。このケースでは、マーケットの急変に伴う懸念がサプライヤーの従業員間に広がっており、契約内容のいかなる変更も自社の立場を弱めるのではと恐れている、などと考察できる。

 失敗から立ち直るプロセスでこのステップを踏む目的は、自分が認識または言及していない障害を明らかにすることである。しばらく後でこの問題に立ち戻り、障害を乗り越える方法を検討するとよい。たとえば、契約期間中に価格を上げる選択肢など、何か別の救済策を提案することによって、サプライヤーの不安を和らげることができるかもしれない。

4.同じ道筋での異なる結果を想像する

 実際にたどったプロセスから、良かれ悪しかれ別の結果に至った可能性を考えてみよう。交渉相手は微笑み、柔軟化の提案に「イエス」と答えている。または、険しい表情で「契約期間の変更は一切認められない」と主張する様子も思い描いてみる。

 このステップの目的は、結果のランダム性を意識することである。同じ道筋をたどっても、さまざまに異なる結果になりうるのが現実というものだ。しかし人は、それを受け入れるのが難しい。うまく立ち直りたいのなら、外的要因がもたらす影響について、健全な認識を持つことが重要だ。このステップはまた、外的要因に対処するための代替策や緊急時対応策を考えるうえでも役に立つ。

5.もっと悪い結果を想像する

 下向きの反事実的思考は、気分を上向かせる方法でもある。別の道筋によるさらに悪い結果を想像すれば、それを避けられた自分を褒めることができるからだ。

 一方、このステップには他の目的もある。実際に起きたことについて、自分の理解を広げることだ。たとえば、あなたは交渉相手の売上げの減少に言及しようかと考えたが、思いとどまったとする。マーケットの状勢を相手はよく把握していない、というメッセージを伝える意図が最初はあった。しかし、売上減に触れれば相手が身構えてしまい、事態を悪化させるのではないかと、間一髪で気づいたのだ。こうした考えをもう少し突き詰めてみると、より広い視野が開け、サプライヤー側の現在の不安を理解できるかもしれない。

 これら5つのステップを踏むことによって、自他への非難やバイアス、その他のありがちな心理パターンを避けることができる。そして失敗の実態を拡大視して、細かい部分まで把握できる。失敗の真因とそうでないものを、より正確に理解しやすくなるのだ。

 また、上向きの反事実的思考によって、次回に向けて計画を立て、今後のパフォーマンスを向上させるための出発点に立つことができる。想像したシナリオを、そのままなぞることはできないかもしれない。だがそれでも、新しい方策を採り入れるために思考を広げることを学んだはずだ。

 私の経験によれば、この方法はマネジャーや起業家にとってさまざまな状況で役に立つ。反事実的思考と対人能力の関連は、統合失調症の研究でも裏づけられている。反事実的思考ができないことは、患者の社会的機能不全の一因であるという。ニューロイメージングの研究によれば、反事実的思考と計画立案は脳の同じ部位で行われる。つまり、この思考法には、情緒的思考と目標設定をつなぐインタフェースのような働きがあるのかもしれない。

 リーダーはしばしば、(投資対効果ならぬ)失敗対効果を最大化せよと言われる。しかし、失敗から学ぶための具体的なステップにはあまり光が当てられていない。この問題を補う手段こそ、反事実的思考を活用して別のシナリオを詳細に考えることなのだ。それによって、次の機会にもっとうまく動けるよう万全を期すことができるだろう。


HBR.ORG原文:5 Steps to Help Yourself Recover from a Setback December 09, 2016

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ニール J. ロース(Neal J. Roese)
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院ジョン L. アンド・ヘレン・ケロッグ記念マーケティング講座教授。