●アレクサと対話型インターフェースの台頭

 私たちはファイナンシャルアドバイザー、医師、職場の同僚と、重要でインパクトのある情報を分かち合うために対話をする。インテリジェントシステムとのやり取りも、同じ方法でよいのではないだろうか。

 次のようなシーンを想像してほしい。ある土曜日の夜、あなたが居間でくつろいでいると、配偶者が投資の状況について尋ねてきた。アレクサに質問すると、次のような対話が交わされる。

あなた:アレクサ、私の投資の状況はどうなっているかな?

アレクサ:概要が必要ですか。それとも、さっそく詳細をお知らせしましょうか。

あなた:概要をお願い。

アレクサ:2016年は年初来5%のプラスで、年間の投資利益目標をやや上回っています。株式、債券、オルタナティブ投資の配分は前年のこの時期とほぼ同一です。ただし現金保有高は、この時期に予定していた額をやや上回っています。単にタイミングの問題かもしれませんが、さらに詳しく調べてもよいでしょう。ご希望なら余剰現金を投資に回し、それに合わせて資産を再配分します。

 私たちの暮らしにまつわるデータにアクセスできるシステムと対話すれば、仕事、経営、健康、自宅、家族、デバイス、近隣地域などの現状を把握することができる。まさにこれは、アドバンストNLGのおかげだ。レポートを受け取ることが、会話を交わす行為に変わる。情報は同じだが、対話のほうがより自然である。

●食料品店での在庫管理

 別の例を紹介しよう。大規模スーパーマーケット・チェーンは、在庫管理にとても気を配っている。特に気を遣うのが、総菜や青果物のコーナーで売られる生鮮食品だ。なぜなら、ここが利幅の稼ぎどころだからである。スーパーにとって正確な在庫管理は死活問題であり、失敗すれば利益に直接影響が及ぶ。

 当然ながら、こうしたチェーン店の経営幹部はデータを大いに重視する。サプライチェーン、生産、販売などに関する大量のデータがあり、それらを店長に活用してもらえるようにして、効果的な在庫フロー管理に必要な情報を提供したいと考えている。ただしそこには、総菜コーナーの責任者は必ずしもビジネスアナリスト、ましてやデータサイエンティストとしての教育を受けていない、という当然の問題がある。

 しかし、アドバンストNLGが報告プロセスにおける主要コミュニケーション手段になれば、データの活用が容易になる。店長は図表やグラフ、生データの代わりに、店舗ごとにカスタマイズされたストーリーを入手できる。そこには分析と処方的アドバイスが平易な言葉で盛り込まれ、ある加工肉製品を需要に応じて今週注文すべきか、それとも翌週まで待つべきかがわかる。

 自然言語と予測モデルの組み合わせによって、当てずっぽうの予測を排除できる。そして、店長の仕事ぶりに相対的かつ絶対的な評価を提供し、改善のためにできることも示せるのだ。

●リアルタイムの金融分析

 ある金融情報企業の例を見てみよう。同社は定期的に、企業の業績を示す報告書を大量に作成している。これらは社内の委員会が共有し、金融機関の展望を大きく左右する意思決定の材料にする。従来、こうした報告書はアナリストが2時間かけて作成していたが、いまではNLGによって、タイムリーかつ正確な報告書をわずか数秒で作成できる。図表やグラフだけでなく、コンピュータが自動で報告書そのものも執筆できる。(企業業績に関する)リサーチの自動化によって、アナリストは報告書の定性的な部分に注力できるため、委員会はより充実した情報に基づいて判断を下せるようになるのだ。

●コールセンターのコーチング

 大規模なコールセンターを抱える大手企業は多い。私の知る金融サービス業界の某企業では、実に1万3000人もの従業員がコールセンターで働いている。察しがつくと思うが、もっと小規模なコールセンターでさえ、従業員の管理を計画・実施するのはひと苦労だ。

 この規模の組織では、個々のマネジャーは、頻繁な業績評価や社員1人ひとりへの継続的な教育を提供する時間とリソースが足りないかもしれない。その一方で、マネジャーの92%がこの種のコミュニケーションは重要だと感じている(英語報告書)。さらに言えば、社員が求めているのはパフォーマンス向上の余地を示した数字や図表ではなく、「修正的フィードバック(corrective feedback)」なのだ。すなわち、改善のアドバイスや、より優れた新しい取り組み方法の探求である。

 アドバンストNLGを使えば、パフォーマンスと電話対応のデータを自動で分析し、各社員に合わせたコーチングレポートを毎週作成できる。レポートは簡潔な話し言葉で、各自の仕事ぶり、改善すべき行動、目標に対する進捗状況を伝えることで、社員を刺激して改善の意欲を高める。レポートのフィードバックの一例を以下に紹介しよう。

「顧客満足度は88%なので、あなたは堅実なサービスと顧客へのコミットメントを示しています。ただし、卓越を目指して改善できる余地があります。放棄呼率(通話状態になった後、何らかの理由で電話が切断される率)の改善に努め、パフォーマンスをどう向上すべきか他のスタッフに相談しましょう」

 あるイノベーティブな大手金融サービス機関が社内でこのアプローチを試したところ、それ以前は実現不可能だった規模と頻度で、個人向けのレポートを提供できるようになった。

 ニッチな新興技術だったアドバンストNLGは今後、データの表層に組み合わされ、デフォルトのコミュニケーションレイヤーとなっていく。すると、「人はデータを理解するためには、特定の技術を身につけねばならない」という概念が滑稽に思えてくるはずだ。

 データに対する期待は、急速に転換期を迎えようとしている。いまや意識することがなくなった他のイノベーションと、この点では変わらない。無限の知識をポケットに入れて持ち歩ける携帯電話、世界中の人々と無料で対話できるビデオ会議システム、自律的に家を管理するスマートハウスなどは、もはや特別ではなく普通となった。

 ただ、いまや当たり前のものとして受け入れられているが、こうした発展は起こりえないと思われた時代もあった。今後数年間を見据えると、アドバンストNLGの力によってデータにも同様の変化が訪れるだろう。この動きはますます加速し、インテリジェントシステムに対する信頼の醸成にも役立つはずだ。わかりやすい会話調で情報が伝達され、なぜ、どのように結論に至ったかをシステムが平易な言葉で説明できるようになるからだ。

 人間はこれまで常に、ストーリーと言語を通じてコミュニケーションを取ってきた。それがいまさら変わることを、期待すべき理由はあるだろうか。


HBR.ORG原文:Bots That Can Talk Will Help Us Get More Value from Analytics November 24, 2016

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スチュアート・フランケル(Stuart Frankel)
ナラティブ・サイエンス(Narrative Science)の共同創業者兼CEO。同社は企業向けの高度な自然言語生成に取り組んでいる。