「まだらメソッド」を展開する7つのステップ

 ここでは、変わり種ミドルのKD課長が、緑色人材だけの自分のチームに、「新しい色」(人材)を加えるゲーム(実験)を始めた例で説明しよう。新しい色とは、先に述べた「青色+グレー色」である。

 その第1ステップは、図表3「まだら模様を展開する7つのステップ」の通りである。自分の課で行う加色程度のゲームには誰の許可もいらないので、課長の一存で始めてしまえばよい。

 ステップ1を突破したKD課長は、次に、ランチや飲み会で同僚の課長をつかまえて、自分のチームのの実験について話す。これが、ステップ2の「KD課長が同僚課長に青色+グレー色ゲームを紹介する。同僚課長は、その実験を支援する」である。この同僚課長は、変わり種のKD課長が最初に打ち明ける相手だから、それなりに感度がよい人物だ。ここで同僚課長が「自分のチームでもやってみよう」思えばしめたもの。少なくとも、興味をもって成り行きを見守ることになるだろう。

 そうこうしているうちに、KD課長の右腕スタッフのRSさんが、自分でもKD課長のゲームくらいはできると思い始める。KD課長は青色+グレー色ゲームをチーム外で展開したいから、チーム内のことに時間をとられないのは都合がいい。RSさんをみっちりコーチして、KD課長チームの加色実験はRSさんに任せることにする。これがステップ3の「RSさんが課長代行で青色+グレー色ゲームをリードする
」である。

 しばらく経つと、課長が集まる会議で、KD課長たちの活動が話題になる。同僚課長も得意げに話をする。そうなれば、加色実験の話が早晩、経営陣の耳に入る。経営陣の中から、これをうまく活用しようと思う人がでてきて、ステップ4の「経営者が横展開(伝染)を後押しする」となる。

 ステップ4までくると、ステップ1からの相乗効果で、社内に新しい空気が流れ始めている。同調性の高い課長、すなわち、自ら変化を起こす行動をしたがらない課長の中からも、加色実験を始める者がでてきてもおかしくない。加色実験が全社的に蔓延すれば、参加することが同調することになるのだから。

 いずれにせよ、時間の経過とともに、ステップ5の「1、2、3、4が効いて、別の同僚課長が青色+グレー色ゲームを始める」のである。

 KD課長は、同僚課長たちに、青色+グレー色ゲームをどう進めるかについて惜しみなくコーチする。実は、同僚課長を通じて彼らのチームに影響を及ぼすこと自体がネットワーキングの一種であり、外交力の発揮にほかならない(チーム内で始めるグレー色ゲームもネットワークゲームであるが、ネットワークゲームの場合はチーム内であろうとチーム外であろうと同型となる)。

 相前後して、ミレニアル世代の若手から、もっと高速の人材育成をしてほしいという声が出てくる。すると、KD課長の代行を務めるRSさんを招く勉強会などが始まる。研修部門もそれに気づいて、ステップ6の「スタッフの高速成長プログラム」が始まる。

 最後の締めくくりに、経営陣の中から海外事情に通じたGLさんが登場する。彼は、KD課長と同僚課長の活動は、海外でよく見る「ネットワーク型チーム」に近いことを見抜いて、これを組織変革のチャンスととらえる。KD課長たちが自覚しているかいないかにかかわらず、その活動の「筋の良さ」を見抜くGLさんのような経営陣がいれば、日本企業にもグローバル企業のような組織デザインができると判断してレバレッジをかけるだろう。これが、ステップ7の「全社に加色を展開しやすくする組織デザインを導入する」である*2

 以上のステップ1~7のように、緑色組織で青やグレーを加色するゲームが始まり、次第に広まる流れをつくることは十分可能である。

 そのポイントとなるのは、「偶然の確率」を高めることである。変わり種課長が加色ゲームを開始するという偶然の確率と、それが他の課に展開・伝染する偶然の確率を高めることだ。そのために、まだらメソッドでは、青やグレーを加色するための具体的なツールを揃えている。その代表が、本連載で何度かとりあげた「4ボックス・ゲーム・フレームワーク」や「WWH型の設計図」である。

 そのようなツールも活用しつつ、上記の7ステップを刻んでいけば、日本企業における人材の「まだら化」が企業組織の諸部分に伝染していくだろう。伝染の初速は遅くとも、継続すれば必ずやある時点から一気に加色が加速し、ついには全社的な加色が成就する。というのも、青の加色は重層化されたWWHであり、グレーの加色は水平にリンクするWWHであるから、組織のどこかで小さな成功を収めれば、それが別のところでコピーされる。そしてWWHは毛鉤状の触手(connectors)となって、蔦のように組織を覆い尽くすことになるからである。そうなれば、緑・青・グレー(各組織、各人材)の間が接続されて、各色の特徴を生かしたダイナミックなインタアクションが組織の至るところで生起するはずだ。

*2 Network of Teamsは、既存組織と並列的に、新製品や新市場開発のためのチームを大量につくる組織デザインである。