まだら模様の情報のつながり方

 下の図をご覧いただきたい。最下層Ⅰは、諸情報がどのようにつながれていくかを示している。その上のⅡは、専門性が諸情報をつなぐ第2レイヤーである。

 そして、Ⅲは、Ⅰの情報のつながりの範囲が広いか狭いか、またⅡの専門性の重複によって2つに分けることができる。情報のつながりの範囲が広く専門性の重複がない場合を「統合」、反対に情情報のつながりの範囲が狭く専門性が重複する場合を「同調」とする。本連載で提示する日本企業のグローバル組織モデル「まだら模様化」によれば、統合は青色、同調は緑色に対応する。そして、図から明らかなように、統合(青)は同調(緑)より広範囲の情報を包含している(両者における専門性の性質にも差異があるのだが、この点は後ほど敷衍する)。

「統合」にも、「同調」にも、「WWH」という記号が入っている。これは、「Why-What-How」の略記である。この場合のWhyは目的、Whatは目的を達成するために必要なケイパビリティ、HowはそのようなWhat(ケイパビリティ)を集める方法(採用など)や、集めたケイパビリティをWhy(目的実現)に向けてガイドし、動機づける方法(業績評価制度や報酬制度など)を指す。注意していただきたいのは、Whatがケイパビリティであり、その主要な構成要素が専門性だという点である(*1)

「統合」の場合は、カバーしている情報のレンジが広く、専門性も重なりあわず、かつ、専門性の粒度が細かいので、諸専門性をまとめるために、強力なWhyと効果的なHowが必要となる。「同調」の場合は、カバーしている情報のレンジがせまく、かつ、専門性が重なりあっているので、専門性間でうまく連携を取り合うだけでも、まとまることが期待できるので、統合の場合と比べると、WhyとHowにかかわる負担が小さくなる(裏からいえば、WhyとHowがあまり発達しないこととなる)。

 つなぐ情報のレンジを、「統合」よりさらに広げるには2つの方法がある。1つは、統合の階層を重ねる方法である。すなわち、複数の「WWH」に共通したWHYとHOWを設けることで、それらをつなぐわけである(たとえば複数の課を部にまとめることをイメージしていただきたい)。ただし、階層をあまりに多くすると情報の伝達効率が落ちるので、階層の数には限界がある。その限界が結局、つなげる情報のレンジの限界にもなる。

 もう1つの方法は、統合された「WWH」同士を、「ネットワーク」的につなぐ方法である。言い換えると、階層を重ねることなく、水平に「WWH」同士をつなぐことである。階層的な統合と比べて、ネットワークのほうがより幅広いレンジの情報をつなぐことが可能である。このネットワーク的なつなぎ方には色としてグレーを与える(前回取り上げた「ネオブルー」に相当する。青と見分けがつきやすいように、ネオブルーをグレーで置き換える)

 以上より、情報のつなぎ方として、「同調」よりも「統合」、「統合」よりも「ネットワーク」が優れているという印象を与えるだろう。確かに、つなぐ情報のレンジの広さという点では、その通りなのだが、その他の点も考慮すると、3つのつなぎ方は次のように一長一短である。

「同調」(緑)では長期雇用される同質的・同調的なメンバーしかつなげない。ただし、面倒なルールや形式的な仕掛け(職務記述書など)なしで、なりゆきで柔軟につなぐことができる。この柔軟性をうまく活用すると、緑の現場において、「0⇒1」の創造を生み出す可能性を持つ(実際、日本企業における現場でのイノベーションは、この余裕があるときに生じている)。

「統合(青)」では異質・多様なメンバーをつなぐことができる。確実にスケールアップすることに向いている。ただし、統合的なつなぎ方で、つなぐ対象範囲を拡大するには階層化が必要となる。階層数が多くなるとマネジメントが複雑になるので、おのずからつなぐ対象範囲に限界がある。

「ネットワーク」(グレー)では、「統合」よりも広範囲の対象をつなぐことが可能となる。ただし、「統合」の場合のようにつないだ対象を直接的に統治するのではなく、間接的なつなぎとなるので、つなぐ際に、都度交渉時間が必要となるし、つないだ対象に対するガバナンスが、「統合」のようにきっちりと効かせることは難しい。

*1 通常、WHY、WHAT、HOWというパターンを用いるとき、WHATは、「何をするか」の「何」を指すことが多いだろう。しかし、まだらメソッドの設計図においては、WHATは、ケイパビリティを指す。この設計図が、あくまで組織の設計図であり、組織を構成する主要な要素がケイパビリティだからである。そのようなWHATが、WHY実現に向けて生み出すものが、通常の「何をするか」(何を生み出すか)の「何を」にあたることとなる。言い換えれば、通常の意味のWHATは、まだらメソッドでは、設計図にそったパフォーマンス・出力として位置付けられる。