典型的な例を挙げよう。私は多くの企業幹部から、当社レッドハットのような革新的な文化を育むにはどうすればよいか、アドバイスを求められる。たしかに、「さあ、立ち上がってイノベーションを起こそう!」と組織全体に呼びかければ済む問題ではない。

 当社の革新的な文化は、組織全体に受容されて根づいた、複数の行動様式から生まれている。その1つは、良いアイデアと悪いアイデアの違いについて、オープンで率直な議論をする姿勢だ。また、革新的であるためには、失敗を受け入れる必要がある。従業員が限界を押し広げる過程で、たまに失敗をしていないようであれば、当社はおそらく努力が足りていない。失敗を受け入れ、さらには称賛もすれば、イノベーションを促進できる。

 最高峰の山に登ろうと試みた者がいれば、たとえ頂上に立てなくても、その挑戦に報いる。我々はその人に学び、経験を積み重ねていけるからだ。それがイノベーションというものである。

 世界屈指の企業価値を持つアマゾンの例を考えてみよう。創業者でCEOのジェフ・ベゾスは、従業員の試みについて、100倍の投資リターンを上げるチャンスが10分の1の確率であるなら、必ずそれに賭けてほしいと述べている。しかしこれは、会社がリターンを得るには10回中9回の失敗を従業員に許容しなければならないという意味だ。

 この考えは、伝統的な経営手法の企業にとっては理解しがたいかもしれない。なぜなら、そうした企業は客観的な結果や成果を測ることに慣れているからだ。そして、失敗は称えるものではなく罰すべきものだと考えがちだろう。その結果としてイノベーションに行き詰まっても、驚くには値しない。結局のところ、新しい試みに対して何のメリットもないのなら、その危険をあえて冒そうという人はいないはずだ。

 要するに、革新的な文化への第一歩は、イノベーションに挑む従業員に対してリーダー自身がどう振る舞っているかをチェックすることである。これはどんなタイプの文化にも当てはまる。すべてはリーダーの行動から始まるのだ。

 企業文化を変えたいなら、まずは自分を省みて、全組織に見習ってほしい行動の範をみずから示しているかを確認しよう。


HBR.ORG原文:Leaders Can Shape Company Culture Through Their Behaviors October 13, 2016

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ジム・ホワイトハースト(Jim Whitehurst)
企業向けにオープンソースのIT技術を提供するレッドハットのプレジデント兼CEO。著書に『オープン・オーガニゼーション』(邦訳2016年、日経BP社)がある。