現在のところ、最も単純かつ成熟しているのはロボティック・プロセス・オートメーションだ。大量、複雑さが少ない、ルーティンといった性質の作業の自動化に適用できる。特に「回転いす作業」と呼ばれるもの(例:あるソフトウェアのシステムから別のシステムにデータを移行するなど)の自動化に有効だ。

 従来、これらは人間がこなしてきた。Eメールやスプレッドシートから情報を抽出し、一定のルールに従って処理した後、得られたデータをERP(基幹系システム)やCRM(顧客管理システム)などに入力するといった作業である。

 ソフトウェアロボットによってバーチャルな労働力をつくり出せば、企業は業務プロセスをスリム化でき、シェアードサービス(部門横断的に集約された間接業務)の質とコスト効率も向上できる。

 とはいえ、仕事の自動化に関する昨今の熱狂のほとんどは、別の分野で生じている。それは非ルーティン型、複雑、クリエイティブ、探索型といった性質の作業を、人間の代わりにやるシステムだ。つまり、人間の認識作業を自動化できるコグニティブ・オートメーションである。

 機械学習の発達によって、コンピュータは人間によく似た賢い方法で、ビッグデータからパターンや意味を認識するようになっている。これを後押ししているのは、クラウド上の拡張可能なコンピューティング資源、そして有力IT企業による優秀人材への莫大な投資だ。この「認識知能」を用いたシステムは、音声の認識とテキスト変換、自然言語処理、画像認識などをはじめさまざまなアプリケーションに見られ、消費者と企業への提供が増えている。

 企業は、こうしたコグニティブ・オートメーションの技術を3つの分野で活用できる。

 1つ目は、業務プロセスのさらなる自動化、または完全なる再構築だ。自動車保険業界の例で考えてみよう。車の傷み具合を確認するためにスタッフが出向く代わりに、保険契約者が画像認識知能つきのアプリを使い、損傷箇所の写真を撮影する。すると自動的に損傷度が評価され、請求額の見積もりと分類が行われる。それらの情報を人間が受け取り、最終承認する。これらが実現すれば、請求手順を時間とコストの両面で劇的に簡素化できるわけだ。

 他にも、グーグルグラス型の機器によるコグニティブ・オートメーションによって、キャビンアテンダントの仕事を変革できる可能性がある(例:各乗客の好みが登録されたデータにグラス端末からアクセスすることで、軽食が不要な人、ブラックコーヒーがほしい人、機内の免税品をよく買う人、食事を最初に出してほしい人などがわかり、きめ細かいサービスができる)。こうしたテクノロジーの力で、従来の業務の細分化、あるいはルーティン作業の補完や代替を図れば、効率、効果、インパクトを向上させる機会が生じる。

 コグニティブ・オートメーションを活用できる2つ目の分野は、新しい製品やサービスの開発だ。前述の自動車保険の例では、認識知能アプリが契約者への新たな製品・サービスになる。そこにチャットボットのような機能が追加される可能性もあり、保険内容にまつわる補足的なアドバイスをオンデマンドで提供できるようになるかもしれない。

 3つ目に、コグニティブ・オートメーションはビッグデータから新たな洞察を得るために活用できる。たとえば、働き方が将来どう変わるかをふまえて、自社の戦略を改善する場合、人材アナリティクスと機械学習の組み合わせは、分析・予測の有力なツールとなりうる。

 急速に発達しているもう1つの分野は、ソーシャル・ロボティクスだ。従来のロボットとは異なり、新世代のロボットは組み立てラインに固定されていない。移動可能で、私たちの日々の生活空間で動き回るのだ。空を飛んだり水中を進んだりするドローンもあれば、歩行する人型ロボット、車輪で動く「群ロボット」もある。これらはプログラム可能で、新たに与えられたタスクに適応できる。そしてルーティンだけでなく、非ルーティン作業も自動で行う。組み立てラインから解放されたソーシャル・ロボットは、数年前には想像すらできなかった数々の方法で人間と協業できるのだ。

 その好例は、アマゾンが受注処理プロセスの効率向上に活用してきたキバ・システムズのロボットだ。いまや人間は通路を歩いて商品をピッキングするのではなく、ソーシャル・ロボットの群れが適時適切な商品を運んでくる間、所定の作業スペースで立っていればよい。

 アマゾンはロボットを駆使して業務プロセスを再構築することで、人間と交代させたのではなく、人間の生産性を高めた。これは前述の自動車保険のアプリにも同じ可能性がある。ルーティン作業をアプリに任せ、損害査定員はもっと付加価値の高い仕事に集中することで、より多くの案件を引き受けられるのだ。

 アマゾンの従業員は、以前ならば90分かかっていた受注処理を15分でこなせるようになり、効率は20%向上した。また、ロボットは小型なため、在庫を50%増やすこともできた。マネジャーは受注処理全体を監督しているが、そこにはロボットと人間がどう協業しているかも含まれる。

 職業スキルの寿命は短縮し続け、再教育のコストは増えている。したがって多くの企業は、時代遅れになるリスクを減らすべく、従業員のフルタイム雇用にまつわるリスクを再考するようになった。本記事で述べたような業務自動化のバリエーションは、そうした懸念への有効な解決策となりうる。

 適切な自動化テクノロジーを選択し、パフォーマンスを向上させることは、ビジネスにおいて必須となっている。そしてそれらのテクノロジーは、将来の働き方を見据えた自社の包括的戦略と合致していなくてはならない。


HBR.ORG原文:The 3 Ways Work Can Be Automated October 13, 2016

■こちらの記事もおすすめします
「予測可能性」と「エラーごとの損失」、2つの軸で機械に任せる仕事を見極める

 

ジョージ・ザルカダキス(George Zarkadakis)
ウイリス・タワーズワトソンのシニアコンサルタント。人工知能の博士号を持ち、著書邦訳に『AIは「心」を持てるのか』(日経BP社、2016)がある。

ラビン・ジェスサーサン(Ravin Jesuthasan)
ウイリス・タワーズワトソンのマネージングディレクター兼グローバル・プラクティス・リーダー。最新著書にLead the Work: Navigating a World Beyond Employment(Wiley, 2015)がある。

トレイシー・マルコム(Tracey Malcolm)
ウイリス・タワーズワトソン北米地区の人材マネジメントおよび組織連携プラクティス・ディレクター。