有事を起こさないための準備

 具体的な謝罪のやり方としては、6つの段階が示されている。①命や身体にかかわることがないかを確認、②経緯・事態を時系列で整理して完全に把握、③「謝罪シナリオ」を書く、④原因を究明し、再発防止策をまとめる、⑤直接の被害者に、直接謝罪に行く、⑥必要であれば、対外発表をする、というものだ。直接の謝罪や対外的な公表などの順番が遅いようにも思われるが、①~④の準備がおろそかになると、目も当てられない事態になるそうだ。②の作業にあたっては、6W1Hを頭に置き、しっかり事態を把握すること。特に誰に謝るのか、どういう順番で謝るのか、をはっきりさせる。また、実際の謝罪の際には、「自分事」として事態を捉え、真摯に相手に向き合うことを忘れない(逃げ腰な姿勢は非難の的になる)。そして、②~④の作業に当たっては、特別チームを招集するなどして複数で当たること。やることはいっぱいあるが、スピーディに対応することも重要なのだそうだ。

 最後に3章を費やして語られているのは、第4部の「平時の準備」である。著者はあまりの有事の多さと頻繁な謝罪会見から、何も起きていない時に、「危機管理チェックリスト」を作成することを思い立ったそうだが、「危機」をリストアップしてそれに対する「緊急時対応計画」をまとめて共有しておくというのは、いずれの組織においても重要なことだ。そして、ここで強調されているのは、広報担当として、日ごろから関係各位と「グッドコミュニケーション」を取っておくことの大切さである。よいコミュニケーションがよい人間関係、よい人脈につながる。そしてこうしたことが有事に大いに役に立つことになりそうだ。

 企業の不祥事だけでなく、2016年はタレントの不倫騒動やグループの解散、あるいは政治家の公金私物化などをめぐる会見が目立った。謝罪会見の良し悪しがその後の明暗を分けたケースも多かったように思う。ニュースが瞬時に伝わる現代は、謝り方も重要な仕事の技術、と言えるだろう。