●余白を設けて活用する

 創造性には余白が必要である。瞑想が創造性を高めるという研究結果があるが、その一因も余白にあるかもしれない(英語記事)。前出のフェルナンドは言う。「私は瞑想によって、従来の考えやパターンを頭から追い払って、新しいものを取り込むスペースをつくっています。私にとって創造性の要は、それを“内側から湧き出る”ようにすることです」

 瞑想を実践するエグゼクティブは少なくない。だがビジネスパーソンの多くは、そのための時間を取れないと感じてもいるだろう。あなたも同様であれば、思考をさまよわせること(マインドワンダリング)による効果を享受する方法は他にもある。

 たとえば、散歩も創造性を高めることが明らかになっている(英語記事)。歩くことで意識が解放され、空想が誘発される。すると、脳が「問題解決モード」に入るのだ(英語記事)。

 ベストセラー作家のピーター・シムズいわく、「創意を掻き立てるためにはスペースが必要です。スティーブ・ジョブズは頻繁に散歩をしていました。マーク・ザッカーバーグがフェイスブックの新しい本社の屋上を歩き回る姿を、私はよく見かけます」

 グーグルのバスソルムは、体を動かすありふれた行為であれば何でもいいと勧める。「家で掃除機をかける。ジムで有酸素運動マシンに乗る。塀にペンキを塗る。要は、脳を“バックグラウンド作動”状態にさせる活動であれば、何でもいいんです」

 グリスコムもこれに同意する。「私は何かに継続的に取り組んでいる時、途中で負荷の軽い作業をするのが好きです。散歩、サイクリング、ドライブ、皿洗いとか。課題について思いを巡らせながら、些細でも何かを達成できるからでしょうね(皿がきれいになっていく! この区画を踏破している!)。それによって思考プロセスからプレッシャーが取り除かれ、自由連想ができるようになるのです」

●制約を活用する

「余白」と「制約」の両立が必要、というと戸惑う人もいるかもしれない。双方はまったく異なる概念のように思える。だが研究によれば、創造性が高まるには、脳内で空想に関連する部位と、「管理統制」を司る部位の両方が活性化する必要がある(英語記事)。結局のところ成功には、洞察を自由に思い巡らせる能力と、その洞察を思慮深い製品へと結実させる能力とを、組み合わせることが求められるのだ。

 ここでいう制約は、課題の一部として組み込まれているべきものであり、恣意的な制限ではない。マルケイはこう説明する。「ただ“あの丘を占領せよ”ではなく、“〇〇をするために、あの丘を占領せよ”と伝えるのです。そうすれば、状況が変化した場合に、兵士たちはもはや丘を占領する必要がないことを理解します」

 たとえば、ナイキの「フライニット」シューズは、「持続可能性」と「運動性」を両立するようにデザインされている。ナイキの最高サステナビリティ責任者兼イノベーション・アクセラレーター担当バイスプレジデント、ハナ・ジョーンズは、このプロジェクトの制約を設定した経緯をこう説明する。

「まず、“妥協ゼロ”という指針を設定しました。美しさと持続可能性を兼ね備えた、素晴らしい製品をつくるのだ、と。自然環境への負荷を従来の半分に抑えながら、成果を倍増させよ、という厄介な制約を担当チームに与えました。両立し難い2つの要件を、ぶつけて1つにする。こういう制約によって創造的緊張が生まれ、これまでとは異なる対話を迫られるのです」

 同社は、このプロジェクトを成功と考えている。ジョーンズによれば、フライニットは、生産に伴う廃棄物を従来の縫製方法よりも60%減らしながら、高い運動性を実現している。

 自分やチームの創造性を高めたければ、以上のように明白なデータと熟練者のアドバイスがある。これらの実践には時間がかかりそうだと最初は思えても、実際にはそうでもないかもしれない。

 ぬるま湯から抜け出し、考える余白を持ち、自分の得意分野ではない何かについて学び、有益な制約を見出す。このすべてを、職場で普段の1日を過ごすなかで実践すればいいのだ。


HBR.ORG原文:How Senior Executives Find Time to Be Creative September 14, 2016

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エマ・セッパラ(Emma Seppälä)
スタンフォード大学の心理学研究員。同大学で思いやりと利他主義研究教育センターの共同ディレクターを務める。企業の福利に関するコンサルティングを行い、科学ジャーナリストとしてハフィントンポスト紙や自身のウェブマガジン「フルフィルメント・デイリー」などにも寄稿する。