キャリアの「入口」にこだわりすぎてないか

山口文洋(やまぐち・ふみひろ)
リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長
ITベンチャー企業にてマーケティング、システム開発を経験。2006年、リクルート入社。進学事業本部で事業戦略・統括を担当したのち、メディアプロデュース統括部に異動。社内の新規事業コンテストでグランプリを獲得し、「受験サプリ」(現スタディサプリ)の立ち上げを手掛ける。2012年に統括部長に着任し、2015年4月より現職。

山口 私も大学に入学するまでは似たようなものでしたが、日本人はキャリアの「入口」にこだわりすぎだと思います。どの大学に入るべきか、どの会社に入るべきかに一生懸命になりすぎている。入口なんてどうでもいいとまでは言わないものの、どんなに頑張ったとしても、たとえば新卒時点での就職先なんかは運や縁にも大きく左右されるのも事実です。

 でも、多くの人がそこで理想の入口に入れるかどうかを気にして、それができないと失望してしまう人もいます。実際には、それがどんなかたちであっても自分が入った組織の中で、自分なりの喜びを見つけて充実した日々を送ることが重要だと思います。私が小さなベンチャーに拾われたとき、もうここしかないと思ったからこそ頑張ることができました。目の前に与えられた仕事を楽しみながら、結果を出し続けるしかないからです。

 残念ながら、入口にやたらとこだわり、自分にはもっと別の道があるのではと奇妙な理想を追い続けてしまうと、いまいる環境にどっぷりと浸かって面白さを見つけることはできません。それは結果として時間を無駄にしていることになり、仕事の生産性を下げ、良質なアウトプットを出せない状態になります。

柳川 「この入口から入っておかないと先がない」という誤解に近い強迫観念があるのでしょうね。でも実際は、どの入口から入ろうと、その先のルートは意外とたくさんあるものです。それが見えている人と見えていない人とでは考え方が随分違ってきます。道はいつでもつながっているという経験を一度でもしておくと、次に選択するときも気楽に挑めるようになります。

山口 就職活動にあくせくしている学生を見ると、「もっと気楽に考えなよ」と言ってあげたくなります。入社して本当にイヤだったら途中で他の可能性を探ればいい。社内の外国人メンバーにキャリアを聞くと、大学を出て働いてみたけど、違う専門性を身につけたくなって、もう一度大学院などで学び直して来たという人が実に多いんです。

 システムの開発の現場でも、最近の潮流は開発期間を短くするアジャイル型です。でも、日本人の生き方は最初から100点を目指すウォーターフォール型になっています。いまだに東大を卒業してこの会社に入れば人生が約束されたように思う人がいますが、現実はそんなに単純ではありません。

 あっちに行ったりこっちに行ったりして、あとで振り返ってみると、いろいろな点と点が線で結ばれている。その点の結ばれ方が自分のオリジナリティーであり、差別化要素だと思います。私自身、ほとんど無職のような状態でふらふらしていた3年間の経験ですら、いまにつながっていると思います。全員が一本道を目指すだけでは、特にこれからの時代に価値はないのではないでしょうか。ときには直感や好奇心に従うことも重要です。

 次回更新は、11月25日(金)を予定。