注目すべきは、任天堂の岩田聡氏の戦略

――注目なさっている日本のブルー・オーシャンの事例はありますか。

 昨年亡くなった任天堂の岩田聡前社長は、ブルー・オーシャンの戦略家でした。いわゆるゲーム産業は、ゲーマーだけを対象にしていては生き残ることができないと考えました。岩田さんは、決してマイクロソフトのXboxやソニーのプレイステーションに対抗しようと考えたわけではありません。むしろブルー・オーシャン的な考えで、いわゆる非顧客層をターゲットに何ができるかを考えたわけです。

 ニンテンドーDSもWiiも、いわゆるハードなゲーマーをターゲットにしたわけではなく、操作がしやすく、誰でも遊べるようなコンテンツを提供することで、非顧客層を顧客に変えて、独占しました。いま注目を集めるポケモンGOは、この延長線上に出てきたわけです。大人も子どもも含めて、みんながゲームを楽しむようになり、市場そのものが広がったのです。

 岩田さんは、本当に世界中で尊敬を集めた人ですし、ブルー・オーシャンの戦略家でもありました。亡くなられてしまったのが惜しいかぎりです。ですので、日本人にはぜひ任天堂の岩田さんの考え方、この方のブルー・オーシャン的な考え方、戦略を知っていただきたいと考えています。

――レッド・オーシャンに置かれた事業が収益源の場合、企業はレッド・オーシャンでの競争にも経営資源を割かなければなりません。「レッド・オーシャンでの競争」と「ブルー・オーシャンの創造」どのようなバランスで経営資源を割くべきでしょうか。

 大きなポートフォリオを持っている企業は当然、レッド・オーシャンですでに活動しており、たくさんある資源の一部を、ブルー・オーシャンでどのように使うのかを考えなくてはいけません。両者のバランスをとることが非常に重要になってきます。

 この両者のバランスを考える際に役立つのが、PMSマップです。パイオニア、安住者、移行者と現在、将来の軸で区分するこのPMSマップを活用することで、事業を分析できます。仮に、現在と将来の事業ポートフォリオが、安住者を柱にしているなら、成長性は低く、レッド・オーシャンに浸かりすぎていると言えます。その場合は、バリュー・イノベーションを通して、ブルー・オーシャンを切り開く必要性が高いでしょう(注2)

 どの程度をレッド・オーシャンに投資し、どの程度をブルー・オーシャンに投資するのか。そして、それぞれの投資を行うことで、いかにバランスを取っていくのかが、企業の課題だと思っています。いま現在の日本企業を見ると、今日のキャッシュを生むレッド・オーシャンはたくさんあるので問題はないと考えます。しかし残念ながら、いま日本にはブルー・オーシャンがありません。ブルー・オーシャン的な企業を挙げられるかといわれると、難しいのが現状です。いま世界が日本をどのように捉えているのか見てみますと、競争力があるのは、誰もが認めるところですが、クリエイティブかといわれると、けっしてそうではないという答えが返ってくると思います。

 日本企業の多くは、キャッシュフローが潤沢であっても、将来の展望が見いだせていません。レッド・オーシャンが日々のキャッシュを稼ぐ市場であるならば、ブルー・オーシャンというのは、まさに成長のための市場です。企業は、今日のキャッシュを確保しつつ、明日の成長をも確保する必要があります。レッド・オーシャンに留まっていては、停滞から抜け出せないことを学ばなければならないのです。

(注1)『[新版]ブルー・オーシャン戦略』73頁を参照。
(注2)『[新版]ブルー・オーシャン戦略』158頁を参照。