●愛情を示す対象は、同僚、サプライヤー、そして全世界も含まれる

 愛情は、ビジネスシステムの複数のレベルで表現される。同僚に対してやチーム内で、あるいは人事制度を通じて全社に伝えられる時もある。社外でも、サプライヤーや顧客、その他のステークホルダーも対象となる。実際に愛情こそが、企業市民としての役割と持続可能性の取り組みにおける、根本的な動機となるのだ。地域社会や世界が直面している問題の多くにおいて、切実に必要とされているのは愛情だと我々は考えている。

●創業者が率いる企業、同族企業、軍隊では、愛情がより自然に語られる

 意外な発見だが、特定のタイプの組織には愛情が自然に根づいているようだ。分析によると、創業者が率いる企業、同族企業、そして軍隊では愛情への言及(およびその効果)が最も頻繁に見られる。いったいなぜだろうか。愛情の表現には、その人なりの個性を発揮することが問われるからだと我々は理解している。これは、企業における無味乾燥な自動化の対極にあるものだ。

 ならば、大企業は愛情を重んじる組織になることは不可能なのだろうか。いや、そんなことはない。ただし、まずは小さな範囲、たとえば自分のチームに影響を及ぼすことから取り掛かるべきだろう。組織全体が変わるのを待ち望んだり、CEOが全社メールで愛情を宣言してくれないかと期待したりしても仕方がない。

●疑いやためらいが生じるのは、ごく普通のこと

 長年の研究を通して我々が確実にわかっているのは、愛情というテーマを前にすると驚く人もいるということだ。仕事で愛情について語るのは、当たり前の行為ではない。それを承知で、2つの知見を提供したい。

 第一に、このテーマに興味を持ったならば、ビジネスを取り巻く「定説」とは相容れない場合があることを知っておこう。それゆえ、愛情によって人々を導くには大きな勇気が必要となる。組織での正式な職位が何であれ、この行為にはリーダーシップが問われるのだ。

 第二に、愛情について語ることは、聞き手の深い内省を誘発する。愛というテーマに対する自身の関わり方、そしてこれまでの仕事経験、時には遠い幼少期にまでさかのぼった人間関係を振り返る人もいる。そのため、愛情という概念に抵抗を示す人がいるならば、過去の辛い経験のせいかもしれない。それは当然のことであり、尊重すべきである。我々の経験上、愛情について説教したり、組織の人々を強引に変えようとしたりしても効果はない。

●愛情は常にそこにある。ただ注意を払って気づけばよい

 我々はしばしば、「組織にどうやって愛情を取り入れればいいのか」と問いかけられる。しかし問うべきは、「社内にすでにある愛情を、拡大し後押しするにはどうすればいいか」である。Wi-Fiの電波のように、目に見えず「つながっていない」からといって、存在しないとは限らない。愛情の素晴らしいところは、常に存在していることだ。ただ注意を払いさえすればよい。その瞬間に見えるようになる。

 愛情は職場でのごく普通の1日を通して、たいていは些細なやり取りの中にあるため、見過ごされやすい。朝の挨拶での笑顔。プロジェクトへの貢献に対する同僚からの称賛。困っている仲間への気遣いや手伝い。感謝の表明。知り合いではない相手への、ちょっとしたお礼の言葉――。

 我々が読者の皆さんに最も伝えたいメッセージは、「愛情は組織にとって場違いなものではなく、失われてもいない」ということだ。あなたは日々の生活における何らかの局面で、愛情には追求すべき価値がある、と思うことはあるだろうか。ならば生きている間ずっと、愛情を表現する機会はある。

 そこには仕事も含まれる。リーダーとして、同僚として、あるいは製品やサービスの提供者として、職場で愛情の表現を実行してみよう。そうすれば、充実した人生に関するあらゆる教えの根幹にある価値観に、自分の生き方を合わせることができる。


HBR.ORG原文:Can You Really Power an Organization with Love? August 01, 2016

■こちらの記事もおすすめします
共感こそイノベーションの原動力である

 

ダンカン・クーム(Duncan Coombe)
IMDビジネススクールの非常勤教授。組織行動論とリーダーシップ論を担当。共著にCare to Dare: Unleashing Astonishing Potential Through Secure Base Leadershipがある。企業に人材開発のアドバイスを行っている。