それぞれが絵に込めた思い

トップバッターは古野さんです。

「働くうえで大切にしたいと思っているのは、人の幸せです」

 常に、人の顔が浮かぶことが重要だという古野さん。

「僕は一緒に働く人に対しても、自分が生み出すサービスやプロダクトを使う人やその家族を幸せにしたいと思っているんです」

 古野さんは最初、描いた丸が何を意味するのか自分でもよくわからなかったといいます。

「でも、描いていくうちにその人たちひとりひとりの色を『繭』のようにイメージし、画用紙に置いていることに気づきました。そして、それぞれの色は融合することなく独立していて、個性はしっかりと確立されている。それでも、その人たちが紡いだ仕事が全体として色をつくっていくということをイメージしました」

 古野さんは、描いたあとのワークシートにこう書き記しています。

「それぞれの想いの強さ、色の違いでぶつかることもあるけれど、一緒にやって少しずつ交じり合い、仕事が、モノが、組織が形づくられていく。できあがったモノを切ってみると、それぞれの想いがその色のまま、存在し続けている」

 古野さんのつけたタイトルは「和」。そこには、そんな思いを込めたといいます。

 続いては本田さんです。

「私は仕事をするうえで、誰よりも努力をしながら、誰よりも楽しむという姿勢を大切にしています」

 本田さんは、人は誰もある考えや姿勢に行き着くことになった「原体験」があると考えているといいます。

「なぜ働くのか。どうやって働きたいのか。それぞれが生きてきた人生のなかでのターニングポイントやきっかけが原体験となって、動機が生まれてくると思うんです。しかもそれは、明るいことだけではなく「陰」の部分もある。私は、そうした人間の暗闇の部分から、その先にある希望や明るい未来みたいなものを表現したいと思ったのです」

 本田さんは、この絵に描いたものをワークシートにはこう書いています。

「普段は表に出すことはない、隠したくなるような根源の部分。でも、その闇を乗り越えると得られる自由や豊かさ」

 その意味を込めて、本田さんはこの絵に「MidNight」というタイトルをつけました。

「今は真夜中でも、次の日には明るい朝がやってきます。そんなイメージですかね」

 さらに、荒井さんが続きます。

「この絵は、川をイメージして描きはじめました」

 荒井さんが働くうえで大切にしているのは「個性」だといいます。

「それぞれに違う色の水を持った川が混ざり合うのですが、それが濁った色になるのではなく、色と色が混ざり合って最後は鮮やかで複雑な色になる。つまり、個性と個性がぶつかり合ったときに、個性を失って濁るのではなく、個性が生かされて鮮やかさをたたえた新しい色ができていくというイメージを表現したいと思いました」

 描いているうちに、木にも見えてきたと荒井さんは言います。

「でも、川でも木でもどちらでもよかったんです。いずれにしても、僕は人と仕事をするのがすごく好きです。それぞれの人が自分の色を曲げずに意見をぶつけ合える。ただし、色は違っても流れる方向、伸びていく方向が一緒だからこそ、混ざり合って新しい色を出せる。そんな思いが伝わればいいなと思って描きました」

 荒井さんのワークシートも見てみましょう。

「自分の色を持つ川どうしが、ほかの川を合流し、より大きな川をつくっていく。そのとき、色どうしが混ざり合い、それまで見ることのなかった色の誕生を表現している」

 そんな思いを込めて、荒井さんは「交わり彩る個性」というタイトルをつけました。

 最後は南さんです。

「何回かワークショップに参加してきましたが、今回がもっとも無意識に描けたと思います。完成形のイメージから逆算して何かをするのが僕の習性なのですが、今回はそれを無視して、思ったことを描いてみようと考えたからだと思います」

 そのうえで働くことは何かを考えたとき、年齢を重ねるごとにだんだんと変化してきたと南さんは言います。

「20代は自分のため、30代は成果のために働いていたような気がします。でも最近は、そういうことを考えなくなってきたかもしれません」

 そんな思いを込めたのが、南さんの描いた絵です。

「絵に描いた線は、いろいろな人の価値観や意思、志を表しています。これらが目の前で交錯しながら飛び交っている複雑さのなかで、いかに楽しむか。おそらく、目の前の複雑さを解決する能力は、若いときより高まっていると思います。だからこそ、より複雑になったものが、よりスピーディーに飛び交うなかを突破し、次のステージに社員をはじめとした仲間とたどり着くことを楽しむようになったのだと思います」

 自分の目の前に広がっている景色そのもの。ご自分の絵をそう評する南さんは、そこを突破するという意味を込めて「前進」というタイトルをつけたといいます。

 この絵に込めた南さんの思いを、さらに詳しくお聞きしています。詳細はDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー12月号に掲載されていますので、ぜひご覧ください。