経営者のリーダーシップを見せつけられた瞬間

 当日は、各委員による、なぜこの5人を推薦するかのプレゼンからスタートしたが、どの方のプレゼンも圧倒的な説得力がある。話し方は上手いのはもちろんのこと、明確な価値観に裏打ちされた説明に誰もが頷く。

 プレゼン後にいよいよ議論が始まる。この手の会議で、厄介なパターンは、皆が遠慮して慮った発言に終始することと、特定の人が強く発言して暴走してしまうことである。ところがこの場は、そのどちらでもなかった。

 最初にある委員がすかさず口火を切り、まず決め方のルールを提唱した。「民主的に決めよう」というコンセンサスがここで確認された。

 誰もが遠慮なく自分の意見を言うし、他の人の意見に耳を傾け、話を遮るようなことがない。わからないことには質問も出るし、異なる意見も明確に主張される。今回集まった委員は、ここで初めて名刺交換をする人も多く、必ずしも気心知れた集まりではないが、場に対する信頼感があるかのようだった。

「どういう人を選ぶか、我々が試されている」と発言された委員。そして「日本の将来にとって、一番の課題は何か」を話される人。また「ロールモデルとして、このDHBRとして相応しいか」など、まるで自分事のように、真剣に語ってくれる様子を見て、感謝ときれなかった。

 一番驚いたことは、他の委員の話を聞きながら、皆が自分の意見を更新していたことだった。何度か挙手による投票をしたが、当初自分が推薦した人に投票しない人も出てきた。

 予定の2時間を迎えようとする頃、最後の投票で、最後の20人が決まった瞬間、自然と拍手と歓声が起こった。拍手は、議論を尽くしたお互いに対する賞賛であり、歓声は意外な結果に対する驚きが含まれていたであろう。まさに誰もが予想した結果を超えた人選となったのだ。この委員会をチームに喩えると、個人では成し遂げられなかったことがチームで実現した瞬間でもあったようだ。

 僕はこの瞬間、肩の荷がおりほっとしていたが、それは僕だけではなかったようで、皆が清々しい笑顔を称えていた。まるでスポーツの試合で勝利をした後、チームメイトを称えるかのような雰囲気で、横に着席していた委員と、自然と僕は握手を交わしていた。

 この会議で学んだのは、チームの成果はメンバーのリーダーシップの総量で決まるということだ。「2時間で決める」というこの会議の目標達成に向けて、どの人もオーナーシップを発揮された。しかも「責任感をもって最良の人選をする」というミッションに深くコミットし真剣に議論をしてくれた。本業ではない頼まれた仕事であろうと、引き受けた以上、最大の貢献をするという姿である。そして、他の委員に配慮して調整しようとするのではなく、目標である「素晴らしい人たちを選ぶ」という目的に皆が完全に集中していた。だからこそ、終了後の一体感が生まれたのであろう。ここには誰もが相当のリーダーシップを有し、それらをもれなく発揮してくれたのが、この結果になったのであろう。

 決して簡単な会議ではなく、この2時間、皆が相当考えてくれたにも関わらず、終了後にはみなが「楽しい時間だった」と帰っていかれた。

 このようなプロセスを経て今回の20人を紹介できることを、心より誇りに思える。(編集長・岩佐文夫)