オープンかつフェアな場が
委員の葛藤を生んだ

 とはいえ、2時間という限られた時間で、皆が納得のいく結論まで出すのは容易ではない。その点、委員が建設的な議論を望んでいたことも印象的だった。

 そもそも、委員は公正な姿勢で委員会に臨んでいた。取引先や株主、役員といった情報から、親戚・友人関係まで、誰も尋ねていないのに積極的に候補者との関係性についてつまびらかにしていた。さらに投票も挙手制にしたことで、誰が誰を投票したのかが分かり、透明性も高かった。

 これによりオープンな議論の場が作られ、候補者に関する定性的な情報が次々ともたらされた。推薦する、推薦しないに関わらず、有利、不利さまざまだ。たった一つの情報が共感を呼び、選ばれた人物もいた。

 一方で、「その考えは違うのでは」といった場面もあった。委員の年齢や立場を超えて、意見がぶつかりあっていたのだ。

 委員が考え方をその都度〝アップデート″していったのも印象的であった。「推薦したけど、この人は落とすべき」と言っていた委員が「やはりこの人は残すべき」だと前言を翻したこともあった。

 委員の葛藤はかなりあったようだ。その点、何度も投票をするプロセスを経たことで、こうした葛藤を受け止める仕組みができていた。ある種、場の「揺らぎ」を受け入れるプロセスがあったことも、活発な議論につながっていったようだった。

 単に誰かが決めた案を承認するような「静的」な会議ではなく、どんどんと意見を交わして考えを深めていく「動的」な場となったことで、委員の熱量も高まっていった。

 とはいえ、動的な会議の弱みは、時間内に結論に至りにくいことがある。だが、そこは第一線で活躍するプロフェッショナルの力量なのだろう。日頃、限られた時間内で意思決定をしてきたためか、議論が紆余曲折を経てもなおテンポよく進み、時間内に収束していった様子は、普通の会議にはない疾走感があった。

 ある委員は「もう一度、同じメンバーで同じ議論をしたとしても、違った結論になっていただろう」と話していた。委員すらも驚く、二度とはない20人の組み合わせである。これは「われわれが試されている」と自覚した委員たちが、自らリスクをとって選出したことを意味している。

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 私見も交えて選考の内幕について述べたが、是非、こうした選考プロセスも想像した上で、DHBR創刊40周年記念号を手に取っていただき、選ばれた20人の横顔を眺めてもらえれば幸いである。

 こうした状況下で選ばれた経営者にこそ、本当に世の中を変える力と強運の持ち主がいるのではないかと感じる。経営者にとって「未来をつくる」とは、経営者が描く未来を自身に引き寄せることに他ならないからだ。

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左より、高宮慎一氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ)、琴坂将広氏(慶應義塾大学総合政策学部)、出口治明氏(ライフネット生命保険)、岩佐文夫(本誌)、篠田真貴子氏(東京糸井重里事務所)、藤沢久美氏(ソフィアバンク)、北野宏明氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所)、岩田彰一郎氏(アスクル)、入山章栄氏(早稲田大学ビジネススクール)