●「多様性」が実現できる「組み合わせ」を徹底議論

「未来をつくる人は足元の評価で決まるわけではない。逆に言えば、(選出する)われわれが試されていると思うのです」

 これは、ある委員が発言した言葉だ。委員たちには、選出メンバーに「多様性」を持たせたいという強い意志があった。

 なぜなら、多様性の中で生まれる価値の創造こそが、今後、知識産業が中心となる経済・社会において欠かせないという共通認識があったからだ。

 そのため議論は、20人それぞれの役割や立場を明確に分け、同じようにならないように組み合わせていったのである。

 もう少し言えば、候補者の本質を端的に挙げて、抽象化し、ある種のシンボル化をしていったプロセスのようにも見えた。

 具体的には、農業やテクノロジーといった「業種・業態」や、年代、女性、跡継ぎ、高卒、国籍などといった「属性・出自」、さらに社会的価値の追求者か経済的価値の追求者か……などと、候補者の特徴をつかみ、20人の最適な組み合わせを行っているようだった。

 今回、「世界に通用するビジネスで、市場価値を生んでいる女性経営者」や「地方でグローバルに活躍するIT経営者」、「アンケート最下位(知名度ゼロ)なのに、経営プロに絶賛されている20代」などと、かなり特徴的な人たちがバランス良く残ったのも、そのためだ。

 20人を選ぶ上で「同じような人が並ばないようにし、あっと驚くような結果にしたい」。多様性を追求するという委員たちのこだわりを感じた。

●委員の1票を大事にした民主的なプロセス

 一方で、この議論を支えたのが民主的とも言えるプロセスであった。

 当初、委員は推薦者を5人まで選ぶことにしていた。ただ、この段階で候補者52人中、半分にあたる31人が残っていた。それだけ候補がばらついていたのだ。

 そこで、1票を重んじるという手法を採用した。それも委員から「民主主義」という考えが提案され、それに賛同が集まったからだ。

 この段階で、3票以上を集めた候補者は2人いたため、「当選」となった。さらに、2票を得た10人については、「当選確実な人」と「落ちても仕方のない人」とを分けて議論することにした。併せて、1票得た人の中から「復活当選」する仕組みも設けた。

 このやり方は、委員の言葉を借りると「JリーグのJ1とJ2の入れ替え制のようなもの」である。巧妙なのは、「当確圏内から落とす」と「復活させる」という二重の意味を与えたことで、議論の真剣度が増したことにある。

 委員からすれば推薦者が「落とされる」のか推薦者が「復活する」のかで意味合いが全く違う。「落とされたくない」「入れたい」という思惑が交錯し、議論が活発化したようだった。

 ここで、J1にあたる2票以上獲得しているグループから、余人をもって代えがたい人物5人が選ばれた。この結果12人中7人が決まり、残りは5人。1票を獲得したJ2グループ内でトップ層にあたる人物を選出し、J1とJ2の入れ替え戦議論となった。

 委員から推薦者の「応援演説」が行われ、推薦者以外からも候補者に関する追加の情報が寄せられた。その後、J1とJ2の候補者10人に対して、1人3票の挙手制で多数決を採ることとなった。この多数決により3人が決まった。

 残りは2人。1回目の挙手において得票差がなかったため、1人2票で改めて最終投票をすることになった。委員にもさすがに迷いが生じていた。冒頭の様子はこの時点での光景であった。最後の最後でそれまでの態度を変えた委員もおり、盛り上がりは最高潮を迎えていたのだった。