この1年間、小国だが豊かなシンガポールが、まさにそうした構想を進めてきた。「長寿革命」のメリットを最大限に活かし、世代間の交流と相互依存を促進する計画に30億(シンガポール)ドルを投じる予定だ。その主な優先目標の1つは、「世代同士が融和する、結束力ある社会の構築」である。

 この目標に向けて、手始めに私たち自身について青写真を描いてみてはどうだろう。世代間の絆を生み出すための、常識的に可能な手段を考えるのだ。まずは職場で、『マイ・インターン』で賛美されているような絆を実現できるよう、高年者にもっと長期間働いてもらえる機会をつくるとよい。

 たとえば、筆者らの1人が創設した中高年人材支援組織Encore.orgは、「アンコール・フェローシップ」という取り組みを推進している(英語サイト)。企業で豊富な経験を積んだ中高年人材を非営利団体に派遣し、若いリーダーたちに充実したメンタリングを提供してもらうという制度だ。その際、これまで彼らが蓄積してきたマーケティングや人事、財務などの豊富な専門スキルも活用してもらう。

 地域コミュニティにおいては、高齢者と若者が日々交流できるような居住区や仕組みを推進できる。たとえばオレゴン州のブリッジ・メドウズ(Bridge Meadows)や、イリノイ州のジェネレーションズ・オブ・ホープ(Generations of Hope)のようなモデルがある(養子縁組家族と高齢者が助け合う多世代コミュニティ)。アリゾナ州サンシティのような、世代分離型の退職者コミュニティに対するアンチテーゼだ。多世代共生への動機をつくるうえで、こうした既存の例が参考になる。その際、老人ホームと保育施設を同じ場所につくるといった賢いやり方がある。これは、シンガポールの計画における目玉の1つだ。

 別の有望な分野として、多世代教育(age-integrating education)がある。米国が誇る2つのキャンパス、ハーバード大学の「アドバンスト・リーダーシップ・イニシアチブ」、およびスタンフォード大学の「ディスティングィッシュト・キャリア・インスティテュート」は、中高年世代を対象とした教育課程である(すでに成功を収めたリーダーの、社会貢献に向けた自己変革を支援)。また、スペインのIEビジネススクールとロンドンのニュー・カレッジ・オブ・ヒューマニティーズも共同で、同趣旨の教育をグローバル規模で行う「シニア・フェロー・プログラム」をまもなく開始する。

 多世代教育は、大学セクターに限られる必要はない。クリーブランドにあるチャータースクール(公費による民間運営校)、インタージェネレーショナル・スクール(The Intergenerational School)では、小学生への教育のあらゆる側面に、高年者によるメンタリングや補習指導、社会的支援を取り入れている。それによって生徒の成績だけでなく、高年者の心身の健康も大幅に向上することが実証されている(この学校と前述のブリッジ・メドウズは、若者と高齢者の融合で画期的な成功を収めた個人や組織に贈られるアイズナー賞に輝いた)。

 以上、すでに進行中のイノベーションから拝借したごく少数のアイデアだが、より包括的な計画の材料になりうるだろう。そしてこれらは、心地よい気分を味わうためだけのものではない。若者への学習支援と高齢者の活力維持を同時に行うことは、社会の結束につながる。のみならず、人生のより長い期間にわたって生産的に活動できる市民が増えるため、経済の活性化にもなる。

 米国では、毎日約1万1000人が65歳を迎えている。21世紀の大きな特徴となる多世代社会では、地域コミュニティや学校や職場を4世代が共有することになるのだ。この状況を最大限に活かすさまざまな方法について、いまこそ議論と設計を始めるべきではないだろうか。そうすれば、人口構成の変化というこの壮大なドラマをハッピーエンドに導くうえで、大いに役立つはずである。

『マイ・インターン』の言葉を借りれば、いまこそ「けっして古びない」社会を実現するチャンスなのだ。

HBR.ORG原文:Aging Societies Should Make More of Mentorship July 06, 2016

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マーク・フリードマン(Mark Freedman)
非営利団体Encore.orgの創設者兼CEO。中高年のスキルと経験を社会問題の解決に活かす活動を展開している。著書にThe Big Shift: Finding Work that Matters in the Second Half of Lifeなどがある。

トレント・スタンプ(Trent Stamp)
多世代の融合を支援するアイズナー基金のCEO。