ふりをし続けて本物になるまでやる

 記者や編集者という仕事をしていると、とにかくたくさんの人と出会い、話を聞く機会に恵まれる。そして、その多くが初対面でもある。そのため、本書で紹介される事例には自分にも思い当たるものがいつくもあった。なかでも、先に紹介した「有能さ」と「温かさ」に代表される例はよく見かけるケースである。

 素晴らしい経営者やリーダーに共通するのは、儀礼的な名刺交換を終えて椅子に座ると、彼らは悠然と構え、まず私たちの言葉に耳を傾けてくれ、何を聞きたいのか、どうすればわかりやすく理解してもらえるのかと真剣になってくれることである。彼らは思考する時間を大切にし、沈黙を恐れることもない。自分が有能であることをあえてアピールする必要もないのだろう。「優位に立とう、主導権を握ろう、自分の力を示そう」(p.100)とはしないのだ。そして、それは温かさという尊敬につながり、その言葉は私たちの心に響いてくることが多い。

 ただ、彼らも最初からそうした態度を取れたのかといえば、おそらくそうではない人も多いのではないか。ある方が「経営者になってからは、社員の前でリーダーらしく振る舞うように意識している」と話していたことを思い出す。「立場が人を育てる」という言葉もあるが、経営者やリーダーに限らず、「身体が心をつくる」という主張の信憑性は高いと思える。

 ただし、そのレベルまで達するためには「ふりをしてやり過ごすのではなく、ふりをし続けて本物になるまでやる」(p.350)ことが欠かせないという指摘には納得である。そして、ハリボテの自信が確固たる自信へと変わったとき、そこには「本物」の自分がいるのではないか。