大局的に戦略を考える

 本書で筆者はこう述べる。「まず、経済活動をスリム化できない国家や企業は、これからの時代、競争についていけずに存続の危機に直面する可能性がある。2つ目に、問題の解決に向けたイノベーションを起こし、たくさんの『あたらしい富』の形を創り出していかなければならない。」と。ビッグ・ピボットが必要なのは、一部の企業ではなく、すべての企業だと言えるのだ。

 近年、既存の戦略や仕組みに対して、疑問を投げかける経営学者は増えている。本書でも取り上げられているが、マイケル・ポーターが2006年に「競争優位のCSR戦略」そして、2011年に「共通価値の戦略」という一連の論文を発表したことで、「共通価値の創造(CSV)」という概念は世界でも注目を集めた。経済的価値を創造しながら、社会的ニーズに対応することで、社会的価値も創造するCSVは、これまでの社会貢献か利益追求かという議論に、新たな道を提示した。また、コトラーやミンツバーグらは、資本主義に対して問題を提起しており、これまでの枠組みに疑問を呈する大きな流れがあるのだろう。本書のビッグ・ピボットという考え方も、非常に大局的であり、そのような流れを汲んでくるのかもしれない。

 ビッグ・ピボットを起こすことは難しいが、本書では手助けになる10の戦略がまとめられており、多くの企業事例が取上げられている。机上の空論では終わらない、実践への道筋が示されている点が有益である。そして、短期的な視点に捉われがちな私たちに、経営に必要な長期的な視点の重要さを、改めて思い出させてくれる1冊でもある。