直接的なやり取りが少ないオンライン学習のような状況に関して、これらの知見からは教育上の有益な示唆が得られる。

 第1に、小さな報酬は生徒たちを、無報酬ではやる気が起きない課題に取り組むよう促せる。その際、最終成績への影響はごくわずかなため、取り組みへの圧力を感じさせずに済む。

 第2に、小さな報酬はフィードバックの役目を果たすことができ、さらなる自律学習を誘発する。これらのインセンティブは、従来型の教室で学習の進捗に関するフィードバックを与える講師と同じように機能しうる。オンラインでさまざまな時間と空間にまたがる膨大な数の生徒を相手にする講師には、なかなか実現できないことだ。MOOCs(大規模公開オンライン講座)の興隆とともに、直接的なやり取りなしに生徒のモチベーションを高めるこのような方法は、ますます重要になるだろう。

 小さな報酬を活用すれば、オンライン教育以外でも行動の変化を促すことが可能だ。オンラインの教育者と大企業のビジネスリーダーには、いくつか共通点がある。たとえば後者は、直接的なコミュニケーションによるメリットが得られない状況で変革を促す必要にしばしば迫られる。

 小さな報酬の活用に適したケースとして、以前は成功していたが現在は破壊的変化に直面している企業における、文化の変革が挙げられる。こうした組織での従業員の行動パターンには、過去に成功したやり方が深く染みついているものだ。事業が好調とはいえなければ、変化を受け入れる姿勢が必要なのに、それが欠けている。

 このような状況で小さな報酬は、変化の受容を控えめに促す手段となりうる。我々のコースで、わずかな報酬によって、ほとんどの生徒が当初関心のなかった学習テーマに意欲を注ぐよう、そっと背中を押されたのと同じように。従業員が外発的報酬ではない理由で行動を変え始める時、それは持続的な行動変革への第一歩となる。

 以上をまとめるとこうなる。

 直接的なやり取りの機会が限られている状況で、小さな報酬は自律的なモチベーションを高める役に立ち、行動変革を導く手段となるのだ。


HBR.ORG原文:Even Tiny Rewards Can Motivate People to Go the Extra Mile June 07, 2016

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ウィーン経済・経営大学(WU)経営学部の上級講師。主な研究分野はモチベーション、および経営管理の機能性。

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ウィーン経済・経営大学(WU)戦略・技術・組織研究所の助教。主な関心対象は個人、チーム、組織の学習とイノベーションのプロセス。現在はオープンイノベーションとユーザーイノベーションに関する問題に取り組んでいる。

ウォルフガング・H・グーテル(Wolfgang H. Güttel)
ヨハネス・ケプラー大学の人材および変革マネジメント研究所の所長兼教授。主な研究分野は、複雑で動的な環境における戦略的変革と学習。企業幹部への教育とコンサルティングにも携わる。