小さな報酬の基本的な概念は、いたって単純である。個人にとって、ある報酬が特定の行動を起こさせるには十分だが、行動のすべてを正当化するには足りない場合、その人は自分の努力が正しかったと納得できるような別の理由を探すのだ。

 些細な報酬を受け取ると、認知的不協和が生じる(私はなぜこれをやっているのだろう?)。そして、この不協和を解消するために、活動を完全にやめるか、あるいは興味関心を高めて楽しみを見出そうとする、という理論である。つまり小さな報酬は、大きな報酬と違って自律的な学習意欲を阻害せず、むしろ高めるということだ。

 人材マネジメントの入門コースは、小さな報酬の効果を試すのに望ましい準実験的な環境であった。コースは1学期間に2回開講され、その構成と内容はまったく同じだ。唯一の違いは、30分かかる任意提出式の8つの宿題に対する報酬である。後期の受講生には、宿題を完了するごとにわずかなボーナスポイントを与え(コースの総合得点に加算)、前期の受講生には与えないようにした。前期・後期の受講者数はそれぞれ約650人であった。

 なお、報酬を「十分に小さく」するよう万全を期すために、別途調査をしておいた。上記の受講者とは異なる数百名の生徒に、この任意の宿題を1つやるには少なくとも何点のボーナスが欲しいかを尋ねたのだ。そして最も低い点数は0.75ポイント(0ポイントという回答は除く)であったため、ボーナスはそれよりも少し低い0.70ポイントに設定した。

 その結果、これほど微々たるボーナスポイントにもかかわらず、被報酬グループからの宿題提出数の平均は、無報酬グループのほぼ4倍に上ったのである。

 さらに重要な点として、被報酬グループには自律的な学習意欲の証拠が示されたことが挙げられる。メインの履修課題の中には、どちらのグループにも報酬を与えない任意制の練習問題があった。被報酬グループは、完全に自発的行為として平均で923問に解答。一方の無報酬グループが解答したのは、それより約3割少ない698問であった。そして、被報酬グループの正答率が46.6%であったのに対し、無報酬グループでは40.5%に留まっていた。

 これらの結果は何を意味しているのだろうか。

 報酬が自律的なモチベーションを阻害する理由は、課題への動機を内発的興味よりも外発的報酬に関連づけてしまうからだ。このことはすでに知られている。ところが報酬が小さい場合には、その影響は反対になる。取り組みを完全に正当化するには報酬が小さすぎるため、被報酬者は何か他の理由(動機)を見出すよう迫られるのだ。

 つまり生徒たちは、自分が追加で課題をこなした理由が、微々たるボーナスポイントにあるとは思っていない。もっと内発的な要因(個人的に重要だと感じた、楽しい、興味がある、等々)に基づくものだと信じているのだ。

 さらに、報酬はフィードバックを与える手段にもなる。ポイント数が成果に連動しているため、習熟度の現状を生徒に知らせることができ、さらなる自律学習を誘発したのである。