BMWも「カー・アズ・ア・センサー」と言っています。つまり、クルマは顧客の動きを集めるセンサーになり、メーカーはそこから得た情報を基に新しい事業を提供するということ。これまでのモノづくりの一方通行的な思いから、フィードバックを中心にした事業へ転換することが必要なのです。

 また、『Waste to Wealth』では、モジュール単位の製品設計により、故障時でも欠陥部品だけを交換・修理し、製品のライフサイクルを延ばすモジュラー・デザインが紹介されています。さらに今後は、複数のお客様、すなわち不特定多数の利用シーンに可変的に対応できるモジュラー・デザインも求められるでしょう。

 もう1点、今回ご説明したサーキュラー・エコノミーの考え方は、地方活性化モデルにも影響を及ぼす可能性があることを指摘しておきたいと思います。地方でGDPを拡大するモデルを作らなければ地域経済は活性化しない。例えば、地域内に現存している「資産」を短くて速いサイクルで収益化する産業モデルと、それを強力に推進する官民連合体を組成することも一案です。

3つの挑戦を成し遂げた企業だけが
アドバンテージを手にできる

――日本企業はどのように最初の一歩を踏み出すべきでしょうか。

 繰り返しになりますが、短くて速い事業サイクルへの転換をうまくやれば、日本企業は新たな成長機会を得られ、ひいては日本社会全体に自律的な経済成長スパイラルを引き起こせる可能性があります。そのためには、次の3つのチャレンジが重要になるでしょう。

 1つは、テクノロジーのマネジメントです。

 お客様がスマホを使うようになったから、デジタル化を進めてそれに対応するといった追従では差別化にならない。新しいビジネスモデルを構築するためには、自社にないテクノロジーを持つ企業と組むことも必要です。最も重要なことは、IoT、ビッグデータ解析を含むデジタルテクノロジー インダストリアルIoTが有機的に統合された、いわばテクノロジーのエコシステムをいかに早く構築するかということです。

 2つ目はタレントのマネジメント。自社の社員はもちろん、社外の人材をどう使うかということも大切になってきます。そのために必要となるのが、他社が持つ資産やケイパビリティを有機的に活用できるエコシステムです。

 有名な話ですが、ユニクロのヒット商品の「ヒートテック」は、東レとファーストリテイリングが共同開発したものです。東レが死守してきた三大合成繊維に関わる技術資産は、ファーストリテイリングと提携していなかったら、ヒートテックとして消費者の新たな需要を掘り起こすことができなかったかもしれません。潜在的な価値のある資産を持つ企業が、そうした価値を顕在化できると気づいた企業とコラボしたことによって資産をスピーディに収益化できた好事例といえるでしょう。

 そして最後は、時間のマネジメントです。短くて速い事業サイクルへの転換とそれによる収益拡大を実現するためには、これまでとは決定的に異なる高速で意思決定を行い、走りながら軌道修正のための第二の矢、第三の矢を放っていくような経営スタイルが必須。つまり、トップ自身がスピード感を持っていかに早く舵取りしていくかが問われます。

 こうした3つのチャレンジを成し遂げた企業だけが、新たな成長機会と競争優位性を手に入れることができます。それこそまさしく、『Waste to Wealth』でいう「サーキュラー・アドバンテージ(競争優位性)」なのです。

(構成/河合起季、撮影/宇佐見利明)