「燃費改善」や「笑い」に課金する
サービスモデルとは?

――利用ベースの課金モデルの事例として、仏タイヤメーカーのミシュランが『Waste to Wealth』でも紹介されています。

 ミシュランは、デジタル技術を活用し、1マイルいくらという利用ベースの課金モデルを導入しました。タイヤに付けたセンサーのデータを基に予防的に補修することで、従来は最大寿命の45%で交換していたのを最大2倍にまで延ばしています。そうやって結果的に、総回転数を増やすこと、稼働率(回転スピード)を上げることにつなげているわけです。

 さらに現在では、そのデータを活用して顧客の燃料費削減に貢献するモデルにまで発展させています。輸送会社向けにタイヤセンサーと他データを組み合わせて燃料費削減策をアドバイスし、燃料コストの削減量に応じて課金するというサービスです。実際、ある輸送会社では、燃料費76兆円(年間)のおよそ1割(年7兆円)の削減に成功しています。

 また、こんなユニークなビジネスも始まっています。スペイン・バルセロナにあるTeatreneu劇場の「Pay per Laugh(1回笑うごとに課金)」というサービスで、観客の笑顔を検知して笑った分だけ料金をもらうというシステムです。

 これだと、面白くなければ料金はとれない。「笑い」という成果を出す、つまり高いハードルを自らに課すことで出演者にも高い水準のパフォーマンスが求められるという好循環のスパイラルにつながっています。何とも斬新な発想ですね。

「儲けすぎてはいけない」という
日本企業のメンタリティが邪魔に

――日本企業はなぜ、そうした課金モデルに踏み込まないのでしょう?

 お客様が自社の製品やサービスを利用した結果、得られる価値に見合った金額をいただくというのは、ビジネスの基本と言えると思いますが、そこで重要となるのは「差別性」になります。

 競合する製品・サービス、あるいは代替製品・サービスとの比較において、唯一無二の差別性があれば、価値に見合った課金をすることが可能となるはずです。そのためには、前述したような不特定多数のお客様の不特定数の利用シーンにおいて、利用価値に対する評価やその理由をつぶさに把握して、それを改善に活かすというサイクルを高速度で回し続けることしか方法はありません。残念ながら多くの日本企業は、そうした努力に十分に注力していなかったのではないでしょうか。その結果、競合との価格競争に陥ってしまい、コストにそこそこのマージンを乗せた分が回収できればよしという考え方になってしまっているように思います。

日本でもサーキュラー・エコノミーは
2~3年以内に離陸する

――日本でもいずれサーキュラー・エコノミーがブレイクする時期が来ると思いますが、それはいつ頃になるでしょうか。

 不特定多数の利用シーンを捉えていくためには、IoTやビッグデータ分析、エコシステムの構築などがカギになってきます。こうしたインフラ投資はもうかなり進んでいますから、あとは何のためにやるのかという目的が明確になれば、そこから先は速いのではないでしょうか。個人的にはそのトリガーが引かれるのが、ここ2~3年以内だろうと思っています。

 日本は製造業が多いのですが、例えば半導体製造装置メーカーは新興国の安価な製品に対抗するためにもビジネスモデルの転換が急がれるでしょう。半導体製造装置とソフトウェアを組み合わせて、データ情報を収集しながらメンテナンスする、グレードアップするといった取り組みが考えられます。こうしたシステムを構築すれば、転売されてもそのメーカーと取引しなければ装置を使うことはできません。