――使われていない資産の価値をキャッシュ化するにはどうすればいいのでしょうか。

 これまでの小売りを含むサプライヤーは、モノを売ったら消費者との関係はそこで終了してしまい、その製品の利用価値を消費者がどう感じているかを追求してきませんでした。こうした供給側目線の売り切りモデルでは、前述したように使われていない資産の価値が大きくなっていくのも仕方のないことでしょう。というのも、売り切りモデルの消費者は「特定多数」。本来、消費者は「不特定多数」であり、それぞれに千差万別の利用シーンがあったはずなのに、それを十分に考えてこなかったわけですから。

 一方で、消費者側の価値観には大きな変化が起きつつあります。アクセンチュアが実施した「グローバル消費者調査2015」では、先進国の消費者は、購買という行為に対する「無関心化」の傾向が顕著になっています。何が欲しいかわからない消費者にはムリに買わせるのではなく、利用してもらってその価値を体感してもらい、自分のニーズに気づかせるというアプローチが必要です。

 つまり、消費者側の視点で考えれば、購買ではなく、利用時点で利用した価値に応じて課金するモデルが適しているのです。「不特定多数の利用者に多様な利用シーンで製品をフルに活用してもらい、商品価値の収益化を図ること」が、今の消費者ニーズや価値観に最もフィットした戦略といえるでしょう。

「短くて速い事業サイクル」の構築が必要

――利用時点での課金モデルとなると、経営スタイルもこれまでとは変わってきます。

 その通りです。1回買ったら終わり、ではなく、不特定多数の人に多様なシーンで繰り返し利用してもらうためには「短くて速い事業サイクル」の構築が必要です。それにはこれまでのモノづくりや、提供の仕方などを変えなければなりません。具体的には、事業サイクルの(1)総回転数を増やす、(2)回転スピードを上げる、(3)1回転あたりの収益を上げる――といった取り組みがポイントになります(下図)

 総回転数を増やすには、製品の長寿命化を図る、耐久性を高める、アベイラビリティ(製品やサービスが利用可能である状態)を高めるなどの工夫の余地があります。回転スピードを上げるには、ユーザーインターフェースを改善して使い勝手をよくする、利用ベースでの課金単位を細かくするなどが考えられます。

 そして、1回転あたりの収益を上げるには、新製品だけでなく、既存製品が持つ価値をどう利用するか、さらに十分に使われていない製造設備などのハード資産、ノウハウなどのソフト資産、自社の人材・タレント資産をいかにキャッシュ化するかが重要になるでしょう。