このように商品を所有することによる価値ではなく、商品を使うことによって得られる価値を売るビジネスに変革することが重要なポイントです。それには、外部のサービスや他社と連携して価値を高める「エコシステムの構築」も不可欠。ナイキでは、ナビやGPSメーカーと提携し、アプリの機能や対応ハードの拡充を図ったり、パートナー企業とアスリートに役立つアプリを共同開発したりしています。

 エコシステムを波及させていくためには、サービスを通じて得られる体験を共有・増幅させる「共感プラットフォーム」が必要になります。具体的には、ユーザーコミュニティやSNS連携などが挙げられるでしょう。

狙い目はヘルスケアや
住宅関連分野

――そうした「購買行動代行」や「コト売り化」に取り組む日本企業はまだ少ないようですが、有望な分野はありますか。

 例えば、IoTを取り入れたコネクテッドホームを利用しやすいヘルスケアや住宅関連の分野で成功例が出てくるかもしれませんね。体重計と風呂場やトイレなどにつけたセンサー(バイタルデータ)とを組み合わせて健康管理をするサービスなど。今の消費者は、モノを買うこと自体には無関心になっていますが、健康になりたい、生活を改善したいという願望はとても強いんです。

 一方、自動車など単価が高くて利用頻度が低いモノへの関心はますます低くなると思うので、シェアリング化など、新しいビジネスモデルを創造する必要があります。

消費者自身すら気づいていない
ニーズをどう掘り出すか

――企業は今後、「無関心化する消費者」とどのように対峙していけばいいのでしょう。

 先ほど「売買行動代行」のところでもお話しましたが、消費者自身すら意識していないニーズに、どう気づくかということが大変重要になってきます。これまでも顧客理解の重要性が説かれてきましたが、さらにその必要性が高まり、かつ難しいステージに入ったといえるでしょう。

 単なる購買行動、消費データを定量的に分析するだけでは、消費者を理解できたとはいえません。カスタマーエクスペリエンスがバズワードとなっているように、顧客体験をデザインするため、消費者の考え方や感情といったところまでどんどん深掘りしていくことが必要です。

「コト売り化」に関しても、消費者をよく理解してこそ、ソリューションを提供できるわけですから、顧客の心にどれだけ近づけるか、どれだけ距離を縮めることができるかがポイントとなります。

 そうしたアプローチのために、自社の製品・サービスに関する消費者の価値観や期待、ニーズなどを継続的に調査・分析する責任者、チーフ・カスタマー・オフィサー(CCO)を置く企業も増え始めました。さらに、前述したとおり、製品・サービスの利用価値を高めるエコシステム構築のため、外部企業とのパートナーシップも重要になってきます。こうした取り組みに力を注げるかどうかで、企業の将来性が決まるといっても過言ではないでしょう。

(構成/河合起季 撮影/西出裕一)