医薬・消費財メーカーが注目
買収が多い業種で導入が多いのも特徴

――実際、どんな業種の企業が導入しているのでしょうか。

左:赤羽氏、右:井上氏

井上 消費財や医薬品メーカーから始まり、化学メーカー、電力会社など、さまざまな業種に広がっています。米国でいち早く導入した業種の1つは医薬品でしたが、それは大型医薬品の特許切れやジェネリックとの競合、医療制度改革による医療費削減(薬価引き下げなど)などの影響で利益の低下が危惧されたからです。

 日本でも国が医療費削減を明確に打ち出したことを受け、収益への影響を懸念する医薬品メーカーが取り組みを始めています。2018~20年度の早い時期までに日本でのジェネリックのシェアを欧米並みの80%以上に引き上げるとしていることも、収益の圧迫要因となりそうです。ZBBの手法は人件費を対象としていないため、社員を解雇することなくコスト削減ができるという点が日本企業に適しているといえるでしょう。

赤羽 特徴的なのは、医薬品業界などM&Aが多い業種での導入が多いことです。というのも、ZBBのプラットフォームが出来上がると、その基準に基づいて買収企業のコストも見直すことができるので、同質化しやすくなるというメリットがあるからです。

単なるコストダウンではなく
業務改善につながる

――コストを下げるだけではなく、事業構造そのものも見直せるというわけですね。

赤羽 はい、コストを通じて見えてきたことから業務を改善していくことが可能です。例えば、ある地域の物流の費用が目立って多いということがわかれば、その理由を突き止め、改善につなげることができます。こういう場合、サプライチェーンの設計に課題があることが多いのですが、そうであれば、仕組みそのものを見直して効率化を図る提案につなげていくことができます。

 つまり、ZBBコストをヒントに改善できる領域を探す活動です。アクセンチュアでは、最適化が可能な領域を特定するために、業種別や規模別にカテゴリごとのベンチーマークを提供しています。

井上 コストダウンは普通、「単価×数量」というとらえ方で考えていくわけですが、日本では往々にして単価を下げることだけに熱心になります。実際、もうこれ以上無理だろうというところまで単価は下がっている。こういうやり方も否定はしませんが、そもそもそれだけの数が必要なのかどうかを見直したほうが大きなコスト削減効果が期待できます。

 わかりやすくいうと、企業が1本30円のボールペンを一所懸命に交渉して29.5円で購入するよりも、世界で100万本買っていたものを、本当に必要な数量を導き出して40万本にしたほうが、早く、そして大きくコスト削減できるということです。

――コスト削減というと、社員にとってはネガティブで窮屈な印象がありますが、社員の反感を買わず、全社的な取り組みにできるのでしょうか。

赤羽 ZBBは社員の努力というよりも、仕組み化によるコストダウン手法です。一度、プラットフォームを構築できれば、1年目から大幅にコスト削減し、その後も毎年、継続してコストダウンが続けられる仕組みになっています(下図)

 そのようにして企業の体質が筋肉質になれば、業績が上がり、それが報酬にも反映されるわけです。これまで廃棄業者に頼んでいた機密書類を、自分でシュレッダーをかけにいく程度の変化で、結果的に給料が上がるかもしれないのですから、社員にとってもメリットが大きな取り組みといえるでしょう。

(構成/河合起季、撮影/宇佐見利明)