問題の本質に迫らなければ
イノベーションは生まれない

「外国人からの想定外の質問に答えを用意するために、あらゆる物事の本質を深く考える習慣がつき、それがイノベーションを生む発想へとつながったと思います」

 イノベーションにつながる発想はどうすれば生まれると思いますか。

 何事においても、物事を本質的に捉えるようにすることでしょう。私がその癖を身につけられたのは、本物のダイバーシティを経験したからでした。

 私は30歳で部長になり、スイス本社から来た外国人と仕事をするようになったことで、彼らから何千、何万という「想定外の質問」を受けてきました。彼らの質問は、日本人にとっては当たり前のことであり、疑問すら抱いたことのない内容ばかりでした。しかし、だからこそその本質を深く考える必要に迫られ、答えがすぐには出てこないのです。

 私が唯一自慢できることは、そうした外国人からの質問に、20数年間、答え続けてきたことです。たとえば、日本ではなぜ新卒の社員採用を年に1回の就職活動でしか行わないのか。皆さんはその質問に答えられますか。これは日本で昔から続いてきた制度ですが、よくよく考えてみると、納得できる理由が見当たりません。そのため当社では、2011年から「ネスレパスコース」という制度を設けて、年3回の通年採用に変更しました。

 また外国人は、日本のような先進国でスーパーマーケットが400社もあることに驚きます。他の先進国は多くても10社程度ですからね。その理由を尋ねられたとき、営業を何十年も経験した人間でも答えられませんでした。その答えを探していると、日本では47都道府県それぞれで独自の生鮮食品を食べていることがわかりました。物流が満足にできなかった時代に、地元の野菜や魚を食べる習慣が強く根づいたのです。

 リージョナルチェーンは地元の農家や漁師とコネクションがあり、安価でそれらの生鮮を品揃えできましたが、大手チェーンは地元産品を揃えられなかった。生鮮はスーパーの売上に占める割合が高いため、生鮮が弱ければ勝てません。そのため、地場の生鮮に強みをもつリージョナルチェーンが潰れずに残っているのです。その証拠に、生鮮を扱っていない業態はすべて寡占が進んでいます。コンビニエンスストア、家電量販店、そのうちドラッグストアやディスカウントストアもそうなるでしょう。

 外国人からの想定外の質問に答えを用意するために、あらゆる物事の本質を深く考える習慣がつき、それがイノベーションを生む発想へとつながったと思います。

 日本でもダイバーシティの議論は活発化していますが、まだ不十分だとお考えですか。

 日本でダイバーシティというと、すぐに女性活用の問題として捉えられます。女性が働きやすい環境を整えることは大切ですが、私には女性の登用によってダイバーシティが担保されるとは思えません。なぜなら、日本という国で同じ文化と習慣を共有しているので、外国人のような疑問をもつことがあまりないからです。

 ダイバーシティの議論に限らず、日本企業は形式的な取り組みがあまりに多すぎます。そもそも、本質的な問題の捉え方ができていない。それは、日本の経営者がマーケティングを理解しておらず、顧客の問題解決を目指していないからだと私は考えています。

 いつも言っていることですが、経営とはマーケティングそのものです。いまこそ、マネジメント経営からマーケティング経営に変革しなければなりません。それはすべての組織に言えることだと思います。企業の経営者のみならず、NPOやNGOの代表者、政治家もマーケティングを学ぶべきなのです。

 

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