●もっと都合のよいマーケットプレイスはあるか

 アマゾンはEC界の巨人だ。しかし、一部の高級マーケットプレイス(リスト、ファーフェッチ、スプリング、ショップティクスなど)は、アマゾンのビジネスモデルを模倣しながらも、極めてこだわりの強い高級ブランドとの契約を果たしている。その方法として、ラグジュアリー感あふれるユーザー体験を提供し、編集コンテンツを通して商品探しをキュレーションしている。

●外部のサイトで数種のみ限定的に販売できるアイテムがあるか

 販売業者はECプラットフォームで商品を売る場合、特定の商品だけを外部のマーケットプレイスで販売すれば、主力事業との食い合いを回避できる。すなわち自社サイトでは、ストーリーを伝えてブランドへのロイヤルティに根差した関係性を育む。同時に、マーケットプレイスでは単にお買い得商品を求める顧客への販売を拡大すればよい(いまでは多くの小売業者が採用しているアウトレット戦略とよく似た手法だ)。

●他では手に入らない特別な商品を、自社サイトで提供できるか

 自社サイト優先策を採る場合、独占的な商品を揃えることによって競争力を維持できる。そのためには、大きな販路を持たない小規模メーカーから仕入れる、自社でプライベートブランド商品をつくる、といった方法がある。限定商品の販売は、他サイトと価格を比較できないユニークな商品を提供することになるので、大きな強みとなる。ただしこのアプローチの難点は、サイトトラフィックを獲得するための費用がかかることだ。

●自社のユニークな商品の価値をどう伝えるか

 自社サイトを優先させる場合には、優れた品揃えだけでなく、商品の価値を伝えるための良質な情報とコンテンツを持つ必要がある。

 その好例として、高級寝具・タオルをオンラインで直販するスタートアップのパラシュートを挙げよう。私は最近、同社の「クラシックタオル」の新商品を1枚29ドルで購入した。かつて購入したどのタオルよりも値が張るものだったが、いかに思慮深く上質につくられているかという説明が心に響き、価格に納得できたのである。「エアロコットン技術」による高い速乾性が強調され、柔らかさ、耐久性、吸収力を兼ね備えた完璧なタオルだと確信できた。いまも毎日使っている。

●楽しく心地よい使用感のサイトを構築できるか

 率直に言って、アマゾンは価格競争力があり、非常に使いやすいかもしれないが、デザインがかなり見苦しい。かたやニッチなECサイトには、機能性では劣るがデザインが素晴らしいものも多くある。優れたECサイトにはその両方が求められる。高級商品を扱う場合にはなおさらだ。

 自社サイトを優先させる販売業者にとって、メールマーケティングやロイヤルティプログラム以前にやるべきリテンション戦略がある。それは単純に、素晴らしい閲覧・ショッピング体験をした顧客がふたたびそれを望んで訪れるような、心地よいサイトをつくることなのだ。そのためには美しさと実用性を兼ね備える必要がある。

 豪華なコンテンツやビジュアルも、ユーザー体験における実用面も重要だ。素早いページの読み込み、支払いのしやすさ、モバイルサイトの使いやすさ。全体的に商品が見つけやすいことも求められる。これはサイト内でのナビゲーション、商品情報のキュレーション、商品リストのページについて言える。

●サイトを高速化できるか

 販売の大部分をアマゾンや類似のサイトに頼りたくなくても、優れたサイトを自前で構築できなければ、自社サイト優先策は賢明とはいえないだろう。サイトのスピード1つを取っても、決定的に重要となる。

 サイト訪問者の4人に1人は、読み込みに4秒以上かかるサイトは使わないという。ウォルマートは、ページの読み込みが1秒速くなるごとに、コンバージョン率が最大2%向上することを突きとめた。そして100ミリ秒速くなるごとに、同社の増分収益は最大1%増加していた(出典:グローバルドッツ)。

 こうした事実だけでも、あらゆるデバイスでサイトの高速化を図る必要性は明らかだ。開発者と協働して、ブラウザのキャッシング、サイト内のタクソノミー(情報の分類法)の更新、画像の圧縮、古いタグの削除などのバックエンド戦略を実施しなくてはならない。

 マーケットプレイスか、自社サイト優先か――どちらを採るにせよ、販売業者は競争力を維持するためにかつてない努力を求められる。ただし、顧客にリーチする方法は以前より大幅に増えているのも事実だ。オンラインで買い物をする人々は常に価値を求めている。掘り出し物と最高の体験を提供できれば、ブランドロイヤルティを獲得できるはずだ。

HBR.ORG原文:Should You Compete with Amazon or Sell on Amazon? May 23, 2016

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ヘレン・シュミッド(Helen Schmid)
高級下着を販売するジョアネルのEコマース&デジタルマーケティング部門ヘッド。以前はアマゾンとロレアルでマーケティングに従事。