情報システムに10割の完成度を目指す
日本企業は時代錯誤!?

――欧米に比べて日本企業は、市場環境の変化への対応が遅いとの指摘もあります。これもITが関係しているのでしょうか。

 そう言わざるを得ません。欧米と根本的に発想が違うのは、モノづくりに強い日本であるがゆえに、多くの経営者がITもモノとしてとらえ、ITが支える事業や業務が差別化領域か否かにかかわらず、情報システムというモノに10割の完成度を目指したがるという点です。“モノづくり日本”のプライドから、とにかく壊れない、止まらないシステムを作りたいという意識が強いんですね。

 しかし、それは時代錯誤な話。デジタル化が進む市場において、企業成長の生命線となるのは「ビジネスの俊敏性」です。ビジネスの俊敏性を確保するためには、ITには変化にスピーディに対応できる柔軟さが必要になります。

 欧米の先進企業では、変化への対応力を高めるために、システムをITサービスのひとつの構成要素としてとらえています。システムはお客様やユーザーのフィードバックをもとに継続的に改良する前提で8割の完成度で運用を開始し、残りの2割の品質は開発・リリースサイクルの高速化やシステム運用の高度化で補っているんです。個々のシステムの完成度だけを追求するのではなく、ITサービス全体の完成度を高める考え方です。

 ただ日本ならではのシステム品質へのこだわりが必ずしも悪いわけではなく、変化への対応力を高めるにはシステム開発にもメリハリを持たせる必要があるということです。 具体的には、個々の事業の自社にとっての位置づけと市場の成熟度、事業に求められる変化のペース、個々の変化要件の不確実性、品質リスクの許容度などを識別し、適切なシステムアーキテクチャや開発アプローチ、リソースアロケーション、要素技術やスキルの獲得手段、パフォーマンス管理のアプローチを選択する、それが、アクセンチュアが提唱している「マルチスピードIT」と呼ぶ考え方につながります。

事業の進化に合わせた速度で
IT活用する体制づくりを

――その「マルチスピードIT」とは具体的にどのようなものですか。

 今日のようなヒト・モノ・情報が常時ネットワークに繋がっているデジタル社会では、多様な個々人が繋がり、それぞれが思い描く理想的なライフスタイルを共創する市場、すなわち「個」客起点の共創市場が形成されます。最近脚光を浴びているP2P(Peer-To-Peer)やシェアリング・エコノミーは、その代表例といえるでしょう。また、ITが参入障壁を下げているため、こうした新たな市場機会を獲得しようと、新たな事業モデルを展開する異業種や新興プレイヤーが続々と現れます。このような新規参入者(ディスラプター)は、従来の業界の前提を覆す新しい発想やアプローチを創出し、既存のプレイヤーから市場シェアを奪うだけでなく、業界全体の商流・物流構造の破壊までも目論んでいます。