不都合な真実から目を背けてはいけない

「リーダーシップをめぐる議論は、どうもいつも読者や聴衆に軽く麻酔をかけたような具合にしていると感じられる。(中略)現実から乖離したおめでたい人々は、職場で起きることに対して準備ができていない。さらに重要なことに、現実と向き合い、原因を突き止め、是正しようという気構えができていない」

 本書にあるように、世間ではすでにリーダーになった人物が取り上げられることがほとんどだが、彼らがリーダーになるまでの過程は明らかにされない。その真実は本人だけが語れることである。ただ、自分がいかに傲慢で、みずからを偽り、他人を蹴落としてきたことでいまの地位がある、と誇らしげに語る人物を、少なくとも私は見たことがない。

 また、第2章でも指摘される通り、もしすべてのリーダーが謙虚であり続けたのだとしたらどうか。それでは注目される機会すら生まれないため、リーダーになるチャンスはなかったはずだ、という趣旨の指摘は、至極当たり前だが的を射ている。

 時代は変わっても職場環境の根本はそれほど変わらず、わずか数十年で人間の本質に変化が生じたと考えることも難しい。そのため、「理想のリーダーとは何か」という問いに正解はなくとも、「出世するのはどんな人か」という問いにはある一定の解を導けるという考えには、理屈のうえでも実体験からもうなずけるものがある。

 本書は、組織で人の上に立つために何が必要かを学ぶヒントとして読み終えても、十分に有用である。そして同時に、心地よい情報を鵜呑みにすることなく、常に批判的な視点で検証することの大切さも教えてくれる一冊ではないか。