宇宙を知ったことで
地球を小さく感じるようになった

地上へ帰還した直後の油井宇宙飛行士
PHOTOGRAPHY: JAXA/NASA/GCTC/Andrey Shelepin

 宇宙を経験されたことで、ご自身の考え方などに変化はありましたか?

 宇宙に行ったことで、地球を小さく感じるようになりました。国際政治の世界での争いなど、地球にはさまざまな問題がありますが、そんなことでいがみ合っている場合ではないと考えています。それは大きく変わったところです。いまは、これまで以上にさまざまな国の懸け橋になりたいと思っています。国際宇宙ステーションを使ってもらい、国と国の関係がよくなるきっかけになることを願っていますし、そうしなければならない。そう考えるようになったのは自分の中での大きな変化です。

 ただ、そんなことを考える一方で、人間は思った以上にルーズだなと思うこともあります。宇宙では水や空気がとても貴重です。水は尿や汗をリサイクルしてつくっているので本当に貴重なリソースであり、当然、節約しながら体を洗っていましたが、地上に帰ってくるとそれを忘れてシャワーを思いっきり使っていました。「これでいいのかな」なんて思いながら、自分の身勝手さを反省しましたね。

 年齢とともに体力は落ちるため、次に飛行するためにはより厳しい状況が予想されます。

 当然、宇宙飛行士として飛べなくなる時期はやってくると思います。ただ、そのときはそのときで、次にやりたいことが必ずできていると期待しています。自分が若い頃、たとえば30歳くらいのときのほうが、定年して、それからは年金をもらって生活して、でも年金が足りなかったらどうしよう、なんてことを考えていました(笑)。しかし、いまはそんなことはまったく問題ではありません。自分が健康でいる限りは貢献できるところがあるはずだと信じ切れています。引退後のことはまったく考えないようになりました。

 それは、ある程度将来のルートが決まっている人生を捨てて大きな挑戦をし、成功した自信からくるものですか?

 そうかもしれません。私は自衛隊でのキャリアを捨てて、新しい分野にやって来ました。不安はありましたが、自分で人生を変えてそれなりにできたことは自信になっていると思います。仮に宇宙飛行士としてのキャリアが閉ざされたとしても、また別の分野で何かできるだろう。そう思えるようになりました。

 いまは大きな達成感があると思いますが、そこから高いモチベーションを維持することは困難ではありませんか?

 次から次へとやるべきことがあるので、その面では恵まれていると思います。それには、自分自身でやりたいと思うこともあれば、組織から「油井飛行士にはこれをやってほしい」と言われることもあります。それは押しつけではなく、それ自体が大きな目標であることも多いので、プレッシャーに感じることもありますがやりがいはあります。

 最後に、次に飛ぶチャンスを得たとしたら、何をやりたいですか?

 今回、いくつかの作業はできませんでした。たとえば、船外活動や宇宙遊泳をやっていないので、それを次にはやりたいと思っています。それから常に新しいことをやっていたいと思っているので、できるだけ遠くに行きたいとも思いますし、あるいは今回はスコットさんが素晴らしいリーダーシップを取ってくれたのを見て、次は自分が責任ある立場で仕事ができるようになることを目標に頑張ろうと思います。

 ただ、それは急に降ってくるわけではありませんから、大西飛行士や金井飛行士のミッションのサポートや、HTVの改良で実績を残す必要があります。結局、私が希望する仕事は、いまやるべきことについてくるのではないでしょうか。そのためにも、いまは自分がやらなければならないことを、優先順位を付けてこなすだけだと思います。