●自社のビジネスモデルにおける、パートナーシップの役割を再考する

 デジタル技術は、既存のプロセスを改善するための単なる生産ツールではない。パートナーとの協業を容易にするための連携手段でもある。ソフトウェア思考を取り入れるには、他社との提携をふまえたビジネスモデルを再考しなければならない。エコシステムの発展、ネットワーク効果の創出、そして全体的な提供価値の向上に寄与してくれる相手と組むのだ。

 ただし、反対の可能性を検討する必要もある。従来アウトソースしていた機能を、ふたたび内製化するほうが有益かもしれない。

 米国の航空機用エンジンメーカー、プラット・アンド・ホイットニーは、エンジン管理サービスの強化のためにIBMと提携した。同社は、エンジンの厳重な監視が強く求められる軍事用のノウハウを民間機のエンジン事業にも転用し、航空機の運航管理を向上させるサービスを提供している。これを実現するために、自社の資産(エンジン)と専門知識を、IBMの豊富なソフトウェア資産(データとアナリティクス)によって補完している。

 自動車業界の激しい変化に直面するゼネラルモーターズ(GM)も、似たような方法でいくつかの対策を講じている。自動運転のソフトウェアを開発するスタートアップ、クルーズ・オートメーションを10億ドル超で買収した。当初、GMの経営陣は提携も検討したが、自動運転のノウハウは自社に不可欠なコアコンピタンスだと即座に気づいた。

 また、自動運転車とライドシェアの将来像を考えれば、今日の「所有者=ドライバー」というモデルが今度どう変わるかについて、新たな洞察が必要となる。そこでGMは、ライドシェアのプラットフォームを提供するリフトと戦略的提携を結んだ(5億ドルの投資を含む)。GMの車を運行拠点に配置してリフトのドライバーに乗ってもらう。将来的には、それらの拠点に自動運転車を配置する計画だ。この提携により、GMはライドシェア市場への参入機会だけでなく、進化を続けるこの市場のノウハウも得ることができる。

 協業のあり方を考えることは、必ずしもパートナーの獲得ばかりを意味するものではない。時には決別もありえる。先に述べたように、デルタ航空は業界内でソフトウェアを共有する従来のモデル(トラベルポートのプラットフォーム)から逆行し、予約とオペレーションシステムの基礎となる知的財産とデータを社内に取り戻した。外部と提携するよりも、この貴重なノウハウを自社で持つべきだと判断したのである。

 提携か、独自構築か。新たな技術をめぐるこの問いに対し、答えは1つではない。最善の方法は、業界、規模、現在のケイパビリティ、競争の性質などさまざまな要因によって決まるのだ。