●独自のノウハウを体系化し、デジタルプラットフォームを活用して製品・サービスの規模拡大とマネタイズにつなげる

 自社独自のケイパビリティのうち、ソフトウェア層に組み込んでデジタルプラットフォーム上で大規模に提供できるものはどれか。それを見極めることが、大きな商機につながる。

 高級デパートのノードストロームは、顧客サービスを得意としてきたが、これをさらに強化すべく新しいPOSシステムに投資した。ここには顧客データベースが統合され、販売員は顧客の購買履歴や興味関心などの情報にその場でアクセスできる。同社はこの「パーソナルブック」というソフトウェアによって、販売促進、著名人を招いてのイベント、その他の店頭イベントなどを、ターゲットを絞って展開できる。

 デルタ航空の例を見てみよう。経営陣は、顧客体験の向上とオペレーションの卓越性を同時に追求するためには何が必要かに気づいた。それは搭乗者へのサービスとオペレーションのプラットフォームに組み込むための、新しく独占的なソフトウェア・アプリケーションの構築に向けて、早急に投資することだ。同社の再予約システムは、そうしたアプリケーションの1つである。不測の事態が起きると、このシステムは瞬時に何千件もの予約を処理する。そして乗客のスマートフォンに代替便が示されるのだ。

 ソフトウェア層の戦略的重要性に気づいた同社は、このプラットフォームに関連するデータと知的所有権(つまり貴重なノウハウ)を、トラベルポート(旅行関連サービスのプロバイダー)から再取得し、一連のシステムを自社管理するようになった。現在のデルタ航空は、定時到着率の高さ、フライトキャンセル率や荷物紛失率の低さなどの指標では業界トップを誇っている。

 ソフトウェアプラットフォームには、きわめて魅力的な経済性がある。ソフトウェア層の規模と範囲を拡大しやすいため、そこに組み込まれた価値を増幅でき、収益性を伴う成長につながる。企業はわずかな追加コストで新規ユーザーをプラットフォームに加えられるため、規模を拡大するにつれて利益増を見込める。これまでは性質の異なっていた複数のシステムを、つくり変えるのではなく統合できる。モジュール型のプラットフォームならば、異なる複数の市場に適用しやすく、時と共に発展させていける。

 プラットフォーム経済における重要な点として、規模の小さなプレーヤーよりも大手のほうが成功しやすいことが挙げられる(その他の条件は同じとする場合)。

 より大きな企業がソフトウェアプラットフォームに投資すると、より多くの顧客、従業員、生産ユニットから利益が得られ、投資を正当化できる。しかし、小さな企業にはそれが難しい。デルタ航空の場合は、ソフトウェアで実現できる能力をより多くの顧客、従業員、フライトに活かすことで、小さな競合企業が同額の費用を投じるよりも大きな利益を得られる。

 換言すると、小さな企業がソフトウェアプラットフォームを築くならば、最初から規模拡大ができる仕組みにしなければならない。短期間で規模を広げるのは困難なので、他社との提携やネットワークの構築によって成長させる必要もあるだろう。いずれにせよ、企業がソフトウェア思考を取り入れるうえで、規模は決定的に重要な意味を持つ。規模を持つ企業はそれを活かし、そうでない企業は規模拡大の仕組みをつくるのだ。