●誤解3:人間関係とは自然にできていくべきもの

 人間関係は、気の合う人同士の間で自然に生まれ、育っていくもの――これは人脈づくりに関する最大の誤解の1つである。こう考える人にとって、戦略的に系統立てて人脈を築くことは恣意的な行為であり、どこか非倫理的でさえある。

 この考え方の問題は何か。それは、自然にできる人脈は似た者同士の関係になるため、自分にも相手にも大したメリットをもたらさないということだ。人は放っておくと、どんな相手と関係を築く傾向があるのかが、何十年にもわたる社会心理学の研究で示されている。それは自分に似た相手、そして頻繁に出会うため知り合いやすい相手だ(頻繁に会うということは、それだけ共通点が多いということになる)。

 この種の「自己愛的で怠惰な人脈」では、意見・情報の幅広さと多様性は決して生まれない。自分を取り巻く世界への理解を深め、優れた判断を下し、自分とは異なる種類の人たちをアイデアに引き込むために必要な、インプットが得られないのだ。だからこそ仕事上の人脈づくりには、周到さが問われる。適切な相手を見極めて関係を築くための、意識的・協調的な努力の一環なのだ。

●誤解4:人脈づくりは本来利己的なもの

 人脈づくりに努力しない人の多くは、それを個人的な価値観の問題として正当化する。人脈づくりは「不誠実」または「他者を利用する行為」で、不当に優位を得る方法であり、実力主義の原則に反していると見なす。しかしそうでない人は、人脈づくりは互恵的だと考え、ギブとテイクを等分に行うことと見なす。

 ある研究では、人脈づくりに対する倫理面の価値観は、職位によって異なるという傾向が判明した(英語論文。法律事務所を対象に実験)。ジュニアレベルの弁護士は、恣意的な人脈づくりはキャリア進展に必要と認識しながらも、それを「汚いこと」と感じやすかった。一方でシニアレベルの弁護士は、いささかもためらいを感じていなかった。接触した相手に、同等の価値がある何かを自分も返せるという自信があるからだ。

 つまり違いは、相手に貢献できる自信の有無に帰着する。ジュニアの弁護士は、「対等なギブ・アンド・テイクができる関係」と見なすよりも、自分が「相手に請い願う立場」にいるように感じていたのだ。

 私自身の研究によれば、人脈づくりを崇高で価値あるものと捉える方法はただ1つ、実際にやってみることだ。それが自分だけでなくチームや組織全体にもたらす価値を、体感することである。

●誤解5:強い絆ほど価値がある

 有益な人脈をつくるうえでマイナスとなるもう1つの誤解は、「強い絆で結ばれた相手との関係こそ、最も重要」という直観的な考えである。自分をよく知る内輪の人間との、親密で信頼感に満ちた関係だ。それはもちろん重要ではあるが、人は「弱いつながり」の重要性を過小評価する傾向がある。まだあまりよく知らない相手や、たまにしか会わない相手、人脈の輪の端に位置する人たちだ。

 信頼の置ける相談相手や、いつも会う内輪の面々の何が問題か。協力的かどうかは関係ない。自分と同じような情報と視点を持っている可能性が高いということだ。多数の研究が示す通り、イノベーションや戦略にまつわる知見はむしろ、弱いつながりを通じて伝達される。既知の彼らを介して、未知の人への接触が可能になるため、人脈の「接続性」が高まるわけだ。人はそうやって新しいことを学び、遠くにある情報やリソースにアクセスするのである。

 私が教える企業幹部たちが抱く、人脈の現状に関する最大の不満の1つは、それが単に「過去の偶然の産物」であって、未来に役立つ支援基盤とは言えないということだ。人脈を発展させるカギを握るのは、弱いつながり、人脈の端のほうにいる人たち、まだよく知らない相手なのである。

 人脈づくりは意識の持ち方次第で、時間と労力の注ぎ方が変わり、その恩恵が左右される。本来の仕事だけでも時間が足りないというのに、知人の輪を思慮深く広げていかねばならないのか。それが得意になることは絶対にないと思っていても、やるべきなのか。それが品位に欠け、よく言っても政治的な行為としか思えなくても?

 人は考え方を変えられる。ただしあくまでも、直接体験することによってのみである。仕事とキャリアにおいて、人脈は最も重要なリソースだ。そのことを理解するには、自分でやってみてその価値を体感する以外にない。


HBR.ORG原文:5 Misconceptions About Networking April 18, 2016

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ハーミニア・イバーラ(Herminia Ibarra)
INSEAD教授。組織行動学を担当。同校コラ記念講座教授を兼任し、リーダーシップおよび学習理論を担当。著書に『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』『ハーバード流 キャリア・チェンジ術』がある。