経営の本質は不変である

 新しいコンセプト、新しいフレームワークは魅力的ではあるし、目まぐるしく変わる経営環境を考えると、あまりに古い書籍や論文が現在の状況に当てはまるのか、若干疑問に思う人もいるかもしれない。本書で取り上げられている論文の冒頭の一節を紹介しよう。

昨今、さまざまな業界で、新興グローバル企業の競争優位になんとか対抗しようと躍起になっている。人件費を抑制しようと海外に生産拠点を移し、グローバルに規模の経済を働かせるために製品ラインの合理化を推し進めている。
「戦略」が注目を集めるのに従い、活力を失っていった。

 この記述を読むと、最近の日本企業の状況について言及しているような気がしないだろうか。しかし、これが書かれたのは1989年。主語は「欧米企業」であり、「新興グローバル企業」とは主に日本企業を指していたという。

 ちなみにこの論文はC・Kプラハラードとゲイリー・ハメルによって書かれたもので、『コア・コンピタンス経営』のタイトルで、後に書籍にもなっている。この書名はご存じの方も多いだろう。

 リーダーシップなど、人に根差したテーマであれば、普遍的な原理原則があるのは腑に落ちる。しかし、「競争環境が激変した」などと言われる現在と1989年とで、経営について同じような課題が話題に上ることは、興味深いのではないだろうか。本書では「グローバル・マインドセット」について書かれた論文も取り上げられているが、その論文が書かれたのは1969年。半世紀前に挙げられた課題が、現在の日本企業が抱えている課題と同じことに、驚くだろう。

 本書では引用されている論文や関連書籍などについても詳しく記されており、より理解を深めたいテーマについては、その学びの道筋も示されている。新旧の入り混じった書籍・論文を、経営学者の視点から読み解く本書は、経営の本質、ひいては人間の本質についてまで、気づきを与えてくれるはずだ。