しかしやがて、大市というプラットフォームは崩壊へと向かう。度重なる戦争、ルール執行の不備、フランス王の近視眼などが原因だ。

 長期的な視野を持たない者がフランス王となり、権力基盤を強化し始めると、伯爵一族はシャンパーニュの統治権を失った。王は市の長期的な健全性に投資し続けることよりも、商人から金を迅速に絞り取ることをはるかに重視した。

 たとえば、裕福な商人に、市のルールの逸脱を許可する特免状を売り始める(アマゾンが、売り手に顧客を欺く権利代を請求するのと同じだ)。また、王室に近しい商人たちに便宜を図り始め、手数料や法的監視を免れるのを許すようにもなった。こうした結果、市の繁栄を支えていた絶妙な均衡が崩れていく。

 1297年、フランスとフランドル地方(市参加者として重要な一団の本拠地)との戦争が勃発し、多くの商人にとって大市への移動は危険すぎる旅になった。そして、フランドルの織物商人たちを不利な目に遭わせる大義名分にもされた。その後に続いた一連の戦争(1337年に始まった百年戦争も含む)によって、事態は悪化の一途をたどり、交易路の変更も余儀なくされる。やがて大市の復興はほぼ不可能になった。

 そこには現代のプラットフォームへの教訓がある。強欲は破滅のもとになるのだ。市の商人に対する近視眼的な搾取と同じような行為が、現代の世にも溢れている。買い手と売り手の仲介者として決定的なポジションを握った市場創造者は、そこから利益を得たいという避けがたい誘惑に捕らわれる。

 ウーバーはこんな非難を浴びている。新たな車に投資するようドライバーを説得して、ライドシェアのプラットフォームに引き付けておきながら、運賃からの取り分が大きすぎる、というものだ。値下げ競争の元凶として悪名高いアマゾンは、大ヒット商品を扱う出店者からおいしいところを奪っていく。

 プラットフォームのロールモデルを探しているなら、ウーバーやアマゾンに目を向けるだけではいけない。代わりに、シャンパーニュ伯に敬意の杯を捧げよう。


原注:本記事は、The Inner Lives of Markets: How People Shape Them ― and They Shape Us (Public Affairs, 2016)から抜粋・編集している。


HBR.ORG原文:Everything We Know About Platforms We Learned from Medieval France March 24, 2016

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レイ・フィスマン(Ray Fisman)
ボストン大学のスレーター・ファミリー記念講座教授。行動経済学を担当。ティム・サリバンとの共著にThe Inner Lives of Markets(Public Affairs, 2016)、『意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム』(日本経済新聞出版社、2013年)がある。

ティム・サリバン(Tim Sullivan)
ハーバード・ビジネス・レビュー・プレスのエディトリアルディレクター。レイ・フィスマンとの共著にThe Inner Lives of Markets(Public Affairs, 2016)、『意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム』(日本経済新聞出版社、2013年)がある。