顧客は「or」ではなく「and」で考える
企業はトレードオフを乗り越えよ

「安い、良い、速い」のうち2つならば両立できる、というのがこれまでの格言だった。しかし今日の顧客はトレードオフを望まず、安価で良質で速いものを欲する。企業のリーダーが慣れ親しんでいる考え方は、「ビジネスとは相反する目標をめぐる厳しい選択である」というものだ。しかし、もっと顧客に寄り添って考えねばならない。トレードオフの断行ではなく、超越に努めるのだ。

 デジタルによるトレードオフの超越に最も適している例として、以下がある。

●大と小:小さいがゆえのスピード、敏捷性、創造性と、大きいことの特性である規模、範囲、影響力を組み合わせる。

●複雑と単純:世界規模の事業を運営するためのシステムとプロセスを管理しながらも、顧客に対してはシンプルで洗練された体験を創造し提供する。

●グローバルとパーソナル:グローバルベースでの一貫性とリーチを確立する。顧客との交流は、個々人に合わせ最適化する。

顧客はコントロールではなくエンパワーされたい
企業は共感に基づいて行動せよ

 これまでのビジネスのあり方は、企業側が望むことを顧客にやらせる、というものだった。顧客はもうそれを受け入れず、指図されることにうんざりしている。求められているのは、互恵性と透明性に立脚した、真実味のある関係だ。自社が望むことを顧客にやらせるのではなく、顧客の望みを助けようと努めねばならない。

 コントロールからエンパワーメントへの進化は、顧客エンゲージメントの基本要素を変えることを意味する。

●ファネルは従来、顧客を1つのステージから次のステージへと導く直線的なプロセスであり、取引が成立または破談するまで途中で戻ることはなかった。しかしいま、ファネルはエッシャーが描く世界のように流動的で多元的となり、顧客が主導するものである。「取引」に向けて見込み客の獲得とコンバージョンに努めることが主眼ではない。顧客と企業の「共通の意義」を軸として、つながりを築き協働するためのものなのだ。

●チャネルは従来、企業と顧客をつなぐ「パイプ」であり、慎重に練られたメッセージがそのパイプを通じて受け身の消費者に届けられていた。今日のチャネルとは、顧客と顧客自身の欲求をつなぐ「体験」であり、顧客同士をつなぐ「コミュニティ」である。自社製品の機能やメリットを宣伝するツールではない。顧客1人ひとりの目的を理解して共感を築くためのものだ。そして継続的な関係を通して、その目的を達成できるよう支援することである。

顧客の考え方は直線的ではない
企業は非直線的な思考をせよ

 顧客についていくためには、直線思考を捨てる必要がある。今日の顧客は企業に対し、自分がいまいる場所で、望むものを、望みどおりのタイミングと方法で提供するよう期待している。

 ある企業のウェブサイトをノートPCで見ている人が、1度中断するとしよう。次回に再開するのは、モバイル機器やタブレットからかもしれない。あるいは店舗を訪れて販売員と話したり、コールセンターと電話したりという形を取るかもしれない。どの場合でも、中断したところから同じように対応が再開する必要があるのだ。

 いまやビジネスは、全身を使ってバランスをとるゲーム「ツイスター」のようなものである。勝つためには柔軟でなくてはならない。そのためには、主要な業務手法を再考し刷新する必要がある。

●戦略は、市場分析、計画策定、将来の予測にとどまっていてはならない。戦略によって、ケイパビリティの構築、文化の変革、絶え間ない変化への対応もなされる必要がある。

●キャンペーンは、一時的な反応を促す一方向のコミュニケーションであってはならない。継続的な対話を通して、個々人に最適化したカスタマージャーニーを誘発・促進する必要がある。

●パーソナライゼーションは、顧客が「何」を買っているのかを見るだけでは不十分だ。多様なデータソースをリアルタイムで分析して、「なぜ」買うのかを無意識的な動機の部分まで明らかにすることが求められる。

●ソーシャルツールは、単なるメッセージ発信のチャネルであってはならない。正しく活用すれば、本物の関係を築く土壌となり、自社にとって顧客がいかに重要かを明示するものになる。

●ロイヤルティの施策は、ポイントを溜めて報酬と引き換えるだけでは不十分だ。本物で持続的なものにするには、ロイヤルティは互恵的でなくてはならない。顧客に忠誠心を求めるならば、企業も忠誠心で報いることだ。

●オペレーションは、自社の効率だけでなく顧客の効率も追求すべきである。顧客の金銭面だけでなく、時間と労力の面でも助けとなるために、自社の業務をどう最適化できるだろうか。