●一流テクノロジー企業での経験があると、創業者としての成功が見込まれる

 新卒者はいきなりスタートアップの荒波に飛び込む前に、有力テクノロジー企業で働くことを検討すべきである。ファーストラウンド・キャピタルの分析によれば、創業チームの最低1名がアマゾン、アップル、フェイスブック、グーグル、マイクロソフト、ツイッターのいずれかで働いた経験を持つ会社のパフォーマンスは、そうでない会社を160%上回っていた。のみならず、資金調達前の企業価値も50%高かった。

 これは、投資家がそれら大手での勤務経験者を「審査済み」と見なしていることの表れだろう。この6社で職を得るのはきわめて難しいからだ(なお興味深い点として、エリート校の出身であることは高い投資リターンにつながっているが、資金調達前の企業価値には寄与していない。おそらく、投資家は学歴を有効な審査基準とは見ていないからであろう)。

 世界各地のアマゾンは従業員に対し、技術的スキルから職場での時間の過ごし方まで、多岐にわたって多くを要求する。従業員はプロジェクトマネジメントなどの「ハードスキル」と、政治力や人脈づくりなどの「ソフトスキル」の両方を学ぶ。それらが磨かれれば、創業初期の混沌と激動をうまく乗り切るうえで貴重なものになる。

●スタートアップはシリコンバレー以外の地でも成功している

 最も優れたスタートアップは、どこで生まれているのか。今回のデータでは、創業地はパフォーマンスにさほど影響していないようだ。

 ファーストラウンド・キャピタルが出資した会社の25%は、ニューヨーク市およびサンフランシスコ・ベイエリアという典型的な起業拠点ではない場所で創業している。それらのパフォーマンスを平均すると、前述の2大拠点で創業した会社をわずかに(1.3%)上回ってさえいるのだ。これはテキサス州オースティンや、ノースカロライナ州ローリーなど、米国で急成長中の新たな技術系スタートアップ拠点にとって朗報であろう。

 この傾向は、よい投資案件の発見がより簡単になっているという事実とも呼応している。エンジェル投資家とベンチャー投資家はこれまで、内輪のネットワークを介して投資先候補について紹介を受けるのが一般的だった。この伝統が変わりつつある。ファーストラウンド・キャピタルは有望な投資先候補について、さまざまな情報源を通して知るようになった。そこにはツイッターもあれば、起業家と投資家が集い対面で売り込みが行われる「デモ・デイズ」のようなイベントもある。

 こうした新しいタイプの情報源を通して出資に至った会社のパフォーマンスは、従来通りの紹介による会社を58.4%上回っていた。そして、ファーストラウンド・キャピタルを直接訪れてアイデアを売り込んだ創業者たちのパフォーマンスは、紹介による会社より23%高かった。

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 ベンチャー投資において、相性、直感、デューデリジェンスは今後も重要であり続けるだろう。しかし今回の分析は、出資判断においてデータがいかに重要かを物語っている。

 成功しているVCとそのポートフォリオは、長期的なデータ収集と分析によって投資への理解を深めることで、より有効となる。賢いVCはそれによって、自社と投資先のスタートアップに競争優位をもたらすのだ。


HBR.ORG原文:4 Factors That Predict Startup Success, and One That Doesn’t May 03, 2016

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タッカー・J・マリオン(Tucker J. Marion)
ノースイースタン大学ダモア・マッキム・スクール・オブ・ビジネスの准教授。アントレプレナーシップ&イノベーション・グループ所属、イノベーション論修士課程のディレクター。主な研究分野は新製品開発プロセスとイノベーション。